壊れたSCS206AGをIDH16G65C6に交換しました。
C3M0280090DによるAB級SiC MOSFETアンプ
で音を聴いていますが、
FDH038AN08A1による理想ダイオード正負電源の時と比べても
なかなかよい感じです。
性能的にはVfが低いため、
無負荷時+-44.9Vも出ます。
パワフルで見通しのよい音が、
楽しめます。
LTspiceによる回路シミュレーション、EagleによるPCB設計、試作、EMSによる頒布まで
壊れたSCS206AGをIDH16G65C6に交換しました。
C3M0280090DによるAB級SiC MOSFETアンプ
で音を聴いていますが、
FDH038AN08A1による理想ダイオード正負電源の時と比べても
なかなかよい感じです。
性能的にはVfが低いため、
無負荷時+-44.9Vも出ます。
パワフルで見通しのよい音が、
楽しめます。
AB級SiC MOSFETアンプの試作中に、
電源の整流用SiC SBD(SCS206AG)が壊れる状況が発生しました。
8Ω, 100Wのオーディオアンプの負荷を想定して、
If=6Aで足りると考えていましたが、
想定外の状況では不十分のようです。
具体的には、ドライバBJT(2SC4883A/2SA1859A)のばらつきから恐らく
ゲート電圧が発振してしまい、
SiC MOSFET(C3M0280090D)が貫通電流によりショートした模様です。
その結果、負荷が電流検出抵抗(0.22Ω)のみになってしまい、
電圧降下が大きくなり、平滑用コンデンサが充電できずに、
SiC SBDに大きなピーク電流が繰り返し発生する状況になったため、
熱破壊に至ったと推測しています。
そこで、短絡状態の状況における電源回りの振る舞いを
SPICEシミュレーションで確認してみます。
回路図を示します。
SiC SBDのモデルはSCS315AHGです。
300VAのトランスの突入流電流防止用にNTCをつけてあります。
過渡解析の結果を示します。
緑がSiC SBDに流れる電流(Ifrm: 10ms sine halfwave 60A peak)、
赤がSiC SBDの熱損失(Pd: 150W peak)です。
60Aの過電流を許容できたとしても、
平均で50Wx8程度の放熱ができないと、
確実に熱破壊に至ると思われます。
これらの条件を踏まえて、
3つのSiC SBD(Rohm SCS315AHG, CREE C3D16065A, Infineon IDH16G65C6)の
データシートを比較します。
いずれもVr=650V, If=15A程度の製品ですが、
Qc, Vf, Ifrm, Pd, I2tはかなり違うことがわかります。
音質に関係するのはQcですが、
熱の発生はVf, 熱の放出はPd, 過電流への耐性はi2tが支配的です。
また、商用電源の整流用なので、
Ifrmは10ms(50Hz) sine halfwaveで見る必要があります。
これらの基準で選ぶとすると、
Infineon IDH16G65C6が良さそうです。
ただし、放熱板かヒートシンクは必須です。
CoolSiCとは、言い得て妙ですね。
Si8244とTPH3206PSBによるD級GaN MOSFETアンプを試作しました。
電源はSCS206AGによるSiC SBDブリッジを上下独立で使用しています。
Si8244は絶縁型ドライバなので、レベルシフト回路が不要になり、
メインの回路は非常にコンパクトにできました。
保護回路はOCPとDCPを実装しました。
アイドル時の積分回路LT1363の出力振幅を+-1V程度に調整して、
最大入力時の出力振幅をコンパレータLT1016の入力同相電圧範囲に収めています。
Si8244のデッドタイムを75ns程度に調整した結果、
自励発振周波数はシミュレーションでは1.9MHzとなっています。
デッドタイムが短いとアイドル時のスイッチングノイズが大きくなり、
貫通電流が発生します。
音自体は、高音の密度感と低音の充実感が素晴らしく、
申し分ありません。
課題を上げるとしたら、
アイドル時のスイッチングノイズの低減(スナバ回路、ソース端子へのアモビーズ、電源レールへのフェライトビーズ)と、
電源オン・オフ時のノイズの抑制(Si8244のUVLOの変更、UVPの実装)といったところですが、
自作アンプとしては対策なしでも許容範囲です。
比較のためにSiC SBDによる正負電源のシミュレーションも載せておきます。
LTspiceで回路図を起こします。
SCS106AGはすでにディスコンなので、
SCS206AGのSPICEモデルをロームのサイトから持ってきています。
余計な部分はいろいろな実験の後なので無視して下さい。
次に過渡分析の結果を示します。
SCS206AGのSPICEモデルがよくないのか、
100msまでしかシミュレーションできません。
SCS206AGは、スイッチング時間が12 ns、
容量性電荷が9 nCとなっていて、
SCS106AGよりも性能が向上しています。