積分回路とフィードフォワード補償

積分回路にOPA1656を適用しようとするとカットオフ周波数から先のロールオフが-20dB@10MHzで下げ止まってしまいます。

データシートによるとOPA1656はフィードフォワードを使用していて、1MHzから20MHzにかけて位相がうねっていることがわかります。

OPA1656の機能ブロック図
OPA1656の利得および位相対周波数特性

比較のためにOPA1652の位相特性をあげておきます。

OPA1652の利得および位相対周波数特性

いろいろ調べていくと、積分回路のアプリケーションでは位相を進めるコンデンサと積分用のフィードバックコンデンサを抵抗で分離する方法がこちらのアプリケーションノートに載っていました。

LB-2 Feedforward Compensation Speeds Op Amp

高速積分回路

Bob Widlarが書いたアプリケーションノートのようですが、半世紀を経た現在でも役に立ちます。

積分回路の低周波数特性 その5

T型フィルタ(2次CRハイパスフィルタ)による積分回路の積分非直線性(INL)の最適化設計の続きです。

オペアンプOPA1656をの定数を見直します。

極配置の計算は、2次CRハイパス・フィルタ計算ツールを利用しています。

LTSpiceによるシミュレーションモデルとAC分析です。

2次CR積分回路モデル(OPA1656)
2次CR積分回路AC分析(OPA1656: 出力)
2次CR積分回路AC分析(OPA1656: 反転入力)

まず、OPA1656の入力インピーダンスは6TΩ(=R2)、オープンループゲインは150dBとなっています。そこで、R1の値としてR2/R1=142dBとなるように、470Ωを選択します。

またGB積は53MHzあるので、C1=C2=2200pFとすると、p1=12uHz, p2=154kHzとなり、積分線形性帯域をOPA1656の性能に見合った範囲に伸ばせます。

また、反転入力から見たLPF特性はfc=364kHz<812kHz/2となるため、自励発振周波数(オーバーサンプリング周波数)に対しても、適切な値になります。

最後にD級アンプ全体の特性をLTSpiceシミュレーションで、確認しておきます。

D級アンプ回路図(OPA1656)
D級アンプ出力FFT(無信号)
D級アンプ出力FFT(1V, 20kHz正弦波入力)

D級アンプ全体(ΔΣADC(812kHz))としては、オーディオ帯域(20-20kHz)のサンプリング周波数(48kHz)に対して、812/48=16倍程度のオーバーサンプリング相当となります。

また、有効ビット数としては、ENOB=(108-1.76)/6.02=17.6>16ビット相当となっています。

また、ENOB=16bitのときのSINAD(S/N)は、16*6.02+1.76=98.08dBとなるので、高能率のスピーカーで評価する必要があります。

積分回路の低周波数特性 その4

まとめとして、T型フィルタ(2次CRハイパスフィルタ)による積分回路の積分非直線性(INL)の最適化設計を検討します。

オペアンプとしてはOPA2134, OPA1656を検討します。

極配置の計算は、2次CRハイパス・フィルタ計算ツールを利用しています。

LTSpiceによるシミュレーションモデルとAC分析もあげておきます。

2次CR積分回路モデル(OPA2134)
2次CR積分回路AC分析(OPA2134)
2次CR積分回路モデル(OPA1656)
2次CR積分回路AC分析(OPA1656)

まず、積分対象範囲の周波数は20-20kHzのオーディオ帯域なので、2つの極配置としては20Hzより下と20kHzより上にそれぞれ配置することがフィルタの設計目標になります。通常2つあるCの値は同じにします。2つめの抵抗値はオペアンプの非反転入力の入力インピーダンス(FET入力オペアンプの場合10TΩ程度)になります。

C1=470pF, C2=470pF, R1=10kΩ, R2=10TΩとすると極の値はそれぞれ、p1=34uHz, p2=34kHzとなります。

この値で積分回路の出力の20-20kHzの直線性 をAC分析で確認するとほぼ120dB/3decとなります。

ポイントとしては、低域の限界はオペアンプのオープンループゲイン(DCゲイン)に依存するため、適切な抵抗値を設定して直線性のよい部分が20Hzあたりになるよう調整します。

また、高域の限界はオペアンプのGB積に依存するため、容量値を適切に設定して直線性のよい部分が20kHzあたりになるよう調整します。

OPA1656の場合GB積が大きいのとオペアンプ回路の特性のため、20kHzよりも上側は1次の傾斜になりますが、帯域外のノイズシェーピングの形状になるようなので特段影響はないようです。

最後に、OPA2134で実際のD級アンプで音を確認したところ、良好な結果が得られています。