500W フルブリッジPS-ZVSコンバータの回路設計

LTC3722-1 同期整流式デュアル・モード位相変調フルブリッジ・コントローラによる

500W フルブリッジコンバータの回路設計をまとめておきます。

 

LTspiceの回路図です。

LTspiceの過渡解析です。

緑:正側出力電圧(+50V)、青:正側CMC電流(5A負荷)

 

ほとんど、

500W フルブリッジ・コンバータの回路設計

と同じで、

コントローラおよび周辺回路の変更と

共振用のインダクタを追加するだけです。

 

以前、PFC、カレントセンストランス、パルストランスで設計したものを、

倍電圧整流、電流検出抵抗、絶縁型ゲートドライバに置き換えた形になっています。

250W ZVS-PSFB 50V正負電源の設計

 

 

 

 

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正負両電源に最適なカップルド・インダクタ

トランジスタ技術 2003年8月号 特集:ディジタル・アンプ誕生

第6章 出力電圧の精度と電源容量の決め方がポイント!
ディジタル・アンプ用電源回路の設計 :本田 潤   見本PDF 252Kバイト

Appendix
実際のディジタル・アンプ用スイッチング電源 :大和 一夫/狩野 ラワジフ

を読んでいて以下の記述を見つけました(p. 190)。

正負両電源に最適なカップルド・インダクタ

●軽負荷になると出力電圧が上昇する

>コイル電流のゼロ区間が生じることが原因

●対策はコイルに電流を流し続けること

>コイル電流にゼロ区間が生じる回路のコイルと、

コイル電流が流れ続ける回路のコイルとで、

コアを共有すると電流が連続的になります。

>>さて、D級出力段の電源は、

正負の出力回路のうち、

どちらか一方は必ず電流が流れているはずです。

となれば、カップルド・インダクタが

ディジタル・アンプ用電源に適していることは

自明の理ですね。

 

というわけで、LTSpiceで効果を検証してみました。

 

まず、LTC3722-1によるZVS-PSFBの

CTトランス(760895451)による正負両電源に、

カップルド・インダクタ(744844470)を適用した回路です。

センタータップによる両電源構成なので、

正負の電流の向きを考慮して、

カップルド・インダクタ(コモンモード・チョーク)を

平滑コンデンサの前に接続します。

 

次に、軽負荷(1kΩ, 100V(+-50V), 0.1A, 10W)時の

結合係数1の場合と0の場合における、

出力電圧(緑)とチョークコイルの電流(青)の

過渡解析による比較です

結合あり

結合なし

 

最後に重負荷((33Ω, 100V(+-50V), 3A, 300W)時の場合です。

結合あり

結合なし

 

興味深いことに結合ありの時は、

インダクタ電流の振幅(リップル)が小さくなって、

最大出力電圧が増大するようです。

 

磁気回路は奥が深いですね。

LT1249によるPFCの基板設計

LT1249によるPFCの基板設計をまとめておきます。

LTC3722-1によるZVS-PSFB正負電源のプリレギュレータ

(商用電源(AC 100-230V)からバス電源(DC 382V))として使用します。

 

回路はLT1249のデータシートのものとほぼ同じです。

主要部品としては、

リングコアチョークにB82615B2602M001

スイッチングMOSFETにIPA60R280CFD7

整流ダイオードにSTTH8S06FP

を選択しています。

 

部品の配置はこんな感じになりました。

 

部品面のベタパターンです。

 

半田面のベタパターンです。

 

部品数が少ないので、比較的簡単ですが、

高電圧ノードとスイッチングノードに気をつける必要があります。

 

 

250W ZVS-PSFB 50V正負電源のループ補償

250W ZVS-PSFB 50V正負電源のループ補償の設計手順をまとめておきます。

資料としては、以下のデータシートやアプリケーションノートが参考になります。

Application Note 149 Modeling and Loop Compensation Design of Switching Mode Power Supplies

LT8311 Synchronous RectifierController with Opto-Coupler Driver for Forward Converters

LTC3722-1/LTC3722-2 同期整流式デュアル・モード位相変調フルブリッジ・コントローラ

LT4430 2次側オプトカプラ・ドライバ

HCPL-4506/J456/0466, HCNW4506 Intelligent Power Module and Gate Drive Interface Optocouplers

HCPL-4506 Digital/Analog Optocoupler SPICE Model

5KV LED EMULATOR INPUT, OPEN COLLECTOROUTPUT ISOLATORS

Digital Isolator Evolution Drives Optocoupler Replacement

AN681 USING THE Si87XX FAMILY OF DIGITAL ISOLATORS

AN729 REPLACING TRADITIONAL OPTOCOUPLERSWITH Si87XXDIGITAL ISOLATORS

 

まず、帰還ループのトポロジーです。

LT4430のデータシートの図6aを参照します。

この図のPRIMARY-SIDE ERROR AMPはLTC3722-1のエラーアンプに、

オプトカプラはHCPL-4506もしくはSi8710Aに対応します。

LT4430のデータシートの図5から

R1, R2は出力電圧から簡単に決まります。

ここでは、Vout=100V, R1=200k, R2=1.2kとします。

 

次にRc, Rdは、LT8311 Figure 16, 17を参考に決定します。

 

LTC3722-1ブロック図とエラーアンプの特性値です。

LT4430のブロック図とエラーアンプおよびオプトドライバの特性値です。

AN681よりSi8710のブロック図と電流制限抵抗(Rf)の計算式です。

AN729よりSi8710A/Bの伝達特性とグレード別の最適電流(If)です。

 

LT8311のOpto-Coupler Design Guidanceに従うと、

Step 1:

LTC3722-1のエラーアンプはユニティゲイン構成なので、R1=R2とみなします。

Step 2:

LTC3722-1のエラーアンプはVref=1.2V, Vc_low=Vol=0.18Vとなります。

Vx_max=1.2*2-0.18*1=2.04V

Step 3:

AN729よりSi8710Aの場合、Iopto_out_high=3.0mAとします。

またRc=Reとみなして、

Rc=Re=2.04V/3.0mA=680 Ohm

Step 4:

Si8710Aの場合CTR_min=1とします。

If_high=3.0mA/1=3.0mA

Step 5:

Vopto(max)=Opto Driver Output Swing High=Vin -1.05=5.1-1.05=4.05V

Si8710Aの場合Rd=Rf, Vopto(max)=Vf, If_high=Ifなので、

Rd=Rf=(4.05V-2.0V)/3.0mA=680 Ohm

 

次に、Type IIループ補償の設計パラメータとして、

Cc, Ck, C1を除いて単純化し、

R3, C2, C3を決定します。

 

AN149の

Modeling New Power Stage with Closed Current Loop

Loop Compensation Design of a Current Mode Converter

Design Type II Compensation Network of Voltage-Loop ITH Error Amplifier

にしたがいます。

C2=Cthp, C3=Cth, R3=Rth,

fs=160kHz, fc=fs/6=26.7kHz,

LT4430のブロック図から入力抵抗2k Ohm,

Opto Driver –3dB Bandwidth=600kHz

なので、

エラーアンプのゲインカーブから、

gm=10(20dB@600kHz)として、

C2=Cthp=220pF, C3=Cth=1uF,

R3=Rth=10*2k=20k Ohm, Ro=1Meg Ohmとすると

fp0=1/(2*3.14*1uF*1Meg Ohm)=0.159Hz

fz1=1/(2*3.14*20k Ohm*1uF)=7.96Hz

fp2=1/(2*3.14*20k Ohm*220pF)=36.2kHz

 

最後に過渡応答をLT Spiceで確認してみます。

LT4430とHCPL-4506でループ補償を行っています。

1k Ohmの負荷抵抗での起動時の過渡応答です。

緑が出力電圧(Vout),

青が出力インダクタ電流(Il),

赤がLTC3722-1のエラーアンプ出力(Vcomp)です。

まず、電源起動後に急速にデューティー比が大きくなって、

突入電流が立ち上がります。

続いて、インダクタ電流がCCMで減衰していきます。

最後に、出力電圧が+50V(目標正レール電圧)に到達すると、

スムーズにインダクタ電流がDCMに移行しています。

出力電圧が定常状態になって、

出力電流が急速に減少する際にも、

エラーアンプ出力もアンダーシュートがないことが確認できました。

 

250W ZVS-PSFB 50V正負電源の設計

LTC3722-1 同期整流式デュアル・モード位相変調フルブリッジ・コントローラ

による250W ZVS-PSFB 50V正負電源を設計します。

その他、参考になる資料もあげておきます。

AN_201709_PL52_027: 800 W ZVS phase shift full bridge evaluation board

TND379N-D: Half-Bridge Drivers A Transformer or an All-Silicon Drive?

グリーン・エレクトロニクス No.1: 高効率・低雑音の電源回路設計

 

LT Spiceによるシミュレーション回路をあげておきます。

出力電圧の過渡応答はこのようになりました。

 

主な構成要素:

メイントランス(760895751)はLLC共振用のもので、

一次側は、PFC(LT1249)を想定した382Vの入力およびリークインダクタンスによるZVS-PSFBとしています。

二次側は、センタータップとダイオード(STPS20120D)整流およびLC平滑による正負電源としています。

また、補助巻線からダイオードブリッジとドロッパ(LT1086-12)で12Vの電源としています。

 

絶縁にはCT(CST25-0050), PT(1002C), オプトカプラドライバ(LT4430), オプトカプラ(MOC207)を用いています。

 

ZVS-PSFBコントローラ(LTC3722-1)のロジックレベルの出力を

ゲートドライバ(LTC1693-1)とPTで

左右それぞれのハーフブリッジのMOSFET(IPA60R280CFD7)を+-12Vで差動駆動しています。