差動増幅回路のCMRRと抵抗精度

差動増幅回路のCMRRと抵抗精度に関してまとめておきます。

これらの資料が参考になります。

AN-589 ディファレンス・アンプの性能最適化法

Analog Dialogue 48-02 差電圧アンプ回路の“落とし穴”

RAQ Issue #165 ディファレンス・アンプ回路の抵抗は外付けでよいのか?

実際の回路として、電流モードD級GaN FETアンプで、出力LPFの前後の電圧を比例制御するためにユニティゲインの差動増幅回路を利用しています。

LPF通過後の電圧は差動増幅回路の反転入力に加算回路として取り込むため、抵抗内蔵型の差動増幅アンプ(LT1995など)が利用できません。

また、フットプリントを削減するため、積分回路と差動増幅回路は2回路のオペアンプ(ADA4001-2など)で構成している点も外付けの抵抗にするもう一つの理由です。

実際に、1%精度のMFS25F1KBから0.1%精度のRG2012-N-102-B-T5の4つの抵抗を変更してみました。CMRRが約20dB向上する計算です。

RG2012-N-102-B-T5

写真中央の抵抗アレイ作成基板2つにそれぞれチップ抵抗を2つずつ載せてADA4001-2の2回路目の反転入力および非反転入力に実装しています。

音質の変化としては、ドラムのキックなどの打撃音の押し出し感が増すようです。

3レベルPWM D級アンプの試作

3レベルPWM D級アンプを試作しました。

 

主要ディバイスは、

制御用にADA4001-2,

三角波生成用にLT6275,

電流検出にLT1995,

コンパレータにLT1713,

PWMドライバにSi8244,

出力段のSiC MOSFETにC3M0280090D

をそれぞれ使用しています。

 

肝心の音は、

エージングが進んでいる段階ですが、

リファレンスモニタに用いているS-300

ロックコンサートのライブ音源を聴く限り、

自然な感じで色づけのない感じです。

 

ハーフブリッジのGaN電流モードD級アンプとの比較になりますが、

もはやこのレベルになると、

フルブリッジやハーフブリッジなどの

回路方式による音質の違いというのはほとんど感じられません。

 

400Wの出力が必要でない限り回路規模が大きくなるので、

100Wまでならハーフブリッジの電流モードD級アンプで

十分なのかもしれません。

 

3レベルPWM D級アンプの基板設計の改良

3レベルPWM D級アンプの基板設計の改良です。

回路図は定数と部品(電流検出抵抗、LPFのMLCCなど)を

若干変変更しています。

配線図です。

制御部を左側に集めて、電力変換部を右側に集めています。

基板上面のベタパターンです。

BTLなので、電力変換部のグランドを局所化して、

電源レールの取り回しを工夫しています。

また、

スイッチングノードやスナバ回路を局所化しています。

主に左から、制御部電源(-5V, +5V),

ハーフブリッジドライバ電源(+15V(-50V基準)),

パワーグランド(0V)です。

基板下面のベタパターンです。

主に、左から、アナロググランド(0V)、

ハーフブリッジドライバグランド(-50V)、

電源レール(+-50V)です。

フルブリッジ構成で、

制御部のICが10個になるなど、

部品点数が多いので、

レイアウトするだけでも、

なかなか大変です。

 

電流モードのD級GaN MOSFETアンプの試作

電流モードのD級GaN MOSFETアンプを試作しました。

LT1057でPI制御(インダクタ通過前の電圧とインダクタ通過後の電圧状態フィードバック)、

LT1995で電流状態のフィードバック(インダクタ通過後の電流検出)をLT1016に対して行っています。

また、今回は高耐圧のMLCCでLPFとZobelのフィルムコンデンサを置き換えています。

基本回路はいつも通り、ゲートドライバはSi8244,

出力段はTPH3206PSBです。

保護回路として、

LM339でUVPとDCPを実装しています。

 

LT Spiceシミュレーションでは、電圧モードの自励発振式と比較して、

無入力時の可聴帯域におけるノイズフロアが15から20dB程度下がることがわかっています。

 

電流モードの自励発振式における無入力時の出力電圧のFFT

電圧モードの自励発振式における無入力時の出力電圧のFFT

 

実際、試聴してみても電源の整流ハムノイズが明らかに下がります。

音質的にはLPFによるピークが下がる分、

電圧モードよりも相対的に高域はおとなしくなりますが、

低域の明瞭感は明らかに向上します。

 

電流モードのD級GaN MOSFETアンプの設計

D級パワー・アンプの回路設計

第6章 電流モードのハーフ・ブリッジD級パワー・アンプ

を参考にして、

これまでの電圧モード(LPFを含まない帰還構成)を踏まえて、

電流モード(LPFを含む帰還構成)の設計をしてみます。

 

まず、LT Spiceによるシミュレーションモデルです。

本来は、積分器の入力もLPFを含める形で設計するようですが、

必要な自励発振周波数(800kHz程度)が得られないため、

LPF通過前のスイッチングノードの電圧を積分制御(LT1122)に入力し、

比例制御(LT1122)で積分制御の出力とLPF通過後の出力電圧を差動増幅後、

電流検出器(LT1995)の出力(LPFのコイルの電流に比例する電圧)とともに

比較器(LT1016)に入力しています。

電流検出器の出力振幅で自励発振周波数を調整して、

積分器の時定数で、負荷抵抗が最大(シミュレーションでは10kΩ)の時の

安定性を確保します。

ハーフブリッジ(TPH3206PSB)がアイドル時にZVSになるように

デッドタイムはゲートドライバ(Si8244)で、120nsに調整しています。

 

つぎに+-1V, 10kHzの矩形波入力時の過渡応答を示します。

FFTはこちらです。

 

電圧モードのD級GaNアンプは、

積分器だけの簡単な制御回路で、

自励発振周波数が高い(1.3MHz程度)反面、

ZVSにするためにはデッドタイムを長くする必要(200ns)があります。

そのため、ゼロクロス歪みがやや大きいのと、

大振幅時に反対側のPWMのパルス幅が0になる(Sliver Pulse)ため、

B級動作のような状態になっています。

 

一方、電流モードのD級GaNアンプは、

比例制御と電流検出のオペアンプが増えるため制御回路がやや複雑にはなりますが、

LPFの負荷変動を制御できるのと、

定電流アンプにPI制御を組み合わせて定電圧アンプにしているため、

過電流保護回路(OCP)の代わりに直流保護回路(DCP)を盛り込めます。

 

肝心の音の違いはどの程度でしょうか?

試作をしてみるしかなさそうです。

 

C3M0280090DによるD級BTL SiC MOSFETアンプの回路設計

Wolfspeed(CREE)のC3M0280090Dによる3レベルPWMアンプを設計します。

ゲートドライバはSi8244, コンパレータはLT1016,

電流検出アンプはLT1995,  電流状態制御と搬送波生成はLT1364,

電圧状態制御とPI制御はLT1498を用います。

DC-DCコンバーターはDPBW03G-05SPBW03G-15を用います。

 

LT SPICEシミュレーションの回路図を示します。

搬送波周波数は738kHzですが、上下独立しているため実効的な周波数は2倍になります。

デッドタイムは47nsにしています。クロスオーバー歪みが生じないように十分小さくします。

ゲインは32dB(Av=40)となっています。

 

+-1.5V, 10kHz矩形波入力時の過渡解析の結果を示します。

LPFの影響を電流状態制御でフィードバックしているため、

オーバーシュートが小さくなります。

FFTの結果を示します。

ノイズフロアは-45dBとなります。

奇数次の高調波だけが見える形になっています。

1.5MHz付近に搬送波のスペクトルが見えます。

 

電力変換部(LT1016, Si8244, C3M0280090D)のゲインと無駄時間要素の

ラプラス素子とパデ近似による線形平均近似モデルを示します。

BTLなので、差動増幅になっています。

 

周波数解析の結果を示します。

帯域はDC-31kHz(-3db)となります。

LPFの影響による30kHz付近のゲインの増大が補正されています。

DC結合アンプなので、低域までフラットです。

ゲイン交差周波数は90kHz、位相余裕は-80deg(積分器の影響で90deg遅れている)

となります。

 

回路規模は大きくなりますが、

効率がよいため出力500Wでも熱損失は問題になりません。

電流制限と電圧制限を制御部で行っているため、

保護回路は内包しています。