MOSFETの寄生発振条件

MOSFETの寄生発振条件をまとめておきます。

こちらのアプリケーションノートが参考になります。

パワーMOSFET 寄生発振、振動

例として次の2つのMOSFETを取り上げます。

IRF200B211

IRFP250N

まず、アプリケーションノートの図2.21を引用しておきます。

寄生発振等価回路

アプリケーションノートの式(12)が発振条件で、

gm >= (Cgs/Cds)/R3

となって、R3(ドレイン・ソース間等価抵抗)はRg(ゲート抵抗)に反比例となっています。

具体的な数値例を挙げておきます。

IRF200B21: gfs=13S, Ciss=790pF, Coss=62pF, Crss=21pF

gm=gfs=13, Cgs/Cds=(Ciss-Crss)/(Coss-Crss)=(790-62)/(62-21)=18.8

IRFP250N: gfs=17S, Ciss=2159p, Coss=315p, Crss=83p,

gm=17, Cgs/Cds=(2159-83)/(315-83)=8.95

となって、仮にR3=1Ωとした場合、IRF200B21は発振条件を満たしませんが、IRFP250Nは発振条件を満たすことがわかります。

実際のD級アンプの設計では、ゲート抵抗の値とデッドタイムは出力LPFのインダクタに依存するため、発振しない十分大きなゲート抵抗値でデッドタイムを決定する形になります。

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出力容量と帰還容量による貫通電流とその対策

矩形波応答の出力電圧が20V(電源レールが+-45Vなので、

45Vを中心にVdsは振れている)を越えたあたりから、

特に下側のMOSFETのターンオフ時に大きな貫通電流が現れます。

いろいろ調べていくと、どうやらGaN MOSFETの

ドレインソース間容量(Cds=C0ss-Crss, tfに関連)とゲートドレイン間容量(Cgd=Crss, td(off)に関連)が、

ドレインソース間電圧(Vds)20Vから0Vにかけて急激に増大する特性に起因しているようです。

TPH3205WSBQAとFQH44N10の容量特性を引用します。

この貫通電流はものすごいノイズやMOSFETおよびスピーカーの破壊の原因となるため、

対策が必要です。

 

しかしながら、入力段のゲインを26dBから20dBに下げて、

1.5Vの入力信号時に出力電圧が20Vにすることで対処するのが現実的なようです。

 

副次的に周波数特性が90kHzまで伸びますが、

出力は8Ω, 50Wとなります。