Markaudio CHR120用トランスミッションライン・エンクロージャーの設計(その2)

Markaudio CHR120用のトランスミッションライン・エンクロージャーの設計をまとめておきます。

スピコン端子(NL4MPRXX)で、250背高型エンクロージャーにニードルフェルト(7面)の追加工をする設計です。

CHR120-250TL

エンクロージャーとスピーカーユニットのパラメータをもとにLTSpiceによる音響回路モデルで開口端の大きさを決定しました。

CHR120-250TLの音響回路モデル

共鳴管の有効長x1=3.486m,

共鳴管の断面積S1=0.258*0.1395=2.45*S0=0.0360m^2,

開口端の断面積S2=3.14*(1.3*0.0685)^2=1.69*S0=0.0249m^2のときの共鳴管の一次の共振周波数は34Hz=Fs, 群遅延は350msとなります。

CHR120-250TLの周波数特性および群遅延

ニードルフェルトなどの影響で実際のエンクロージャーの特性は、若干変わってきますが、設計としてはこれで十分だと思います。

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Markaudio CHR90用トランスミッションライン・エンクロージャーの設計(その2)

Markaudio CHR90用のトランスミッションライン・エンクロージャーの設計をまとめておきます。

スピコン端子(NL4MPRXX)で、200背高型エンクロージャーにニードルフェルト(7面)の追加工をする設計です。

CHR90-200TL

エンクロージャーとスピーカーユニットのパラメータをもとにLTSpiceによる音響回路モデルで開口端の大きさを決定しました。

CHR90-200TLの音響回路モデル

共鳴管の有効長x1=2.418m,

共鳴管の断面積S1=0.204*0.111=2.664*S0=0.0226m^2,

開口端の断面積S2=3.14*(1.4*0.052)^2=1.96*S0=0.0166m^2のときの共鳴管の一次の共振周波数は44Hz=Fs, 群遅延は160msとなります。

CHR90-200TLの周波数特性および群遅延

ニードルフェルトなどの影響で実際のエンクロージャーの特性は、若干変わってきますが、設計としてはこれで十分だと思います。

Markaudio CHR120用トランスミッションライン・エンクロージャーの設計

Markaudio CHR120用のトランスミッションライン・エンクロージャーの設計をまとめておきます。

スピコン端子(NL4MPRXX)で、200背高型エンクロージャーにニードルフェルト(7面)の追加工を依頼する前提です。

CHR120-200TL

上下の仕切り板の位置を1:2の位置にしていますが、2-Wayなどの場合は適切な位置にずらします。

共鳴管の開口端は加工を簡単にするためにSDの面積相当の丸穴としています。

CHR90のトランスミッションラインの設計はこちらを参照してください。

Markaudio CHR90用トランスミッションライン・エンクロージャーの設計

Markaudio CHR90用のトランスミッションライン・エンクロージャーの設計をまとめておきます。

スピコン端子(NL4MPRXX)で、160背高型エンクロージャーにニードルフェルト(7面)の追加工を依頼する前提です。

CHR90-160TL

上下の仕切り板の位置を1:2の位置にしていますが、2-Wayなどの場合は適切な位置にずらします。

共鳴管の開口端は加工を簡単にするためにSDの面積相当の丸穴としています。

CHR120の場合も、200背高型エンクロージャーで同様の設計ができます。

Markaudio CHR90用エンクロージャーの設計

MarkaudioのCHR90/CHR120が発売されています。

CHR90 新発売 CHR120コイズミ無線で 試聴できます。

Markaudio CHR120 CHR90 新登場 (まずはCHR120から)

 

今後、いろいろなエンクロージャーが出てくると思いますが、

CHR90でバスレフにもトランスミッションラインにもできる大きさの、

トールボーイとして設計するとこんな感じだと思います。

板厚にもよりますが、18-20リットル程度の容量で、

NC7のエンクロージャーを縦に2つ積んだ位のサイズです。

 

それにしても、

13cmフルレンジ一発で44-28kHzまで出せるのは、

見事なドライバユニットの設計だと思います。

 

 

MK442T 4″ 2-Way Transmission Line Tower Speaker Pair

Parts Expressのカタログを眺めていたら、

MK442T 4″ 2-Way Transmission Line Tower Speaker Pair

に目がとまりました。

 

10cmのウーファー2発に19mmのツイーターがついた

トランスミッションラインのタワースピーカーが

$239.95となっています。

 

Audioholicsのレビュー記事はこちらです。

Dayton Audio MK442T Transmission Line Tower Speaker Review

 

日本に送ってもらうと、

送料と関税で2倍くらいの費用になりますが、

それでも破格には変わりないと思います。

 

自作の方が高くついてしまいますね。

 

トランスミッションラインの最適設計

PMCのATLのカットモデルやスペックを見ていて、

気がついたことがあります。

twenty5.26iのエンクロージャー、高さは1.04mで、

カットモデルを見る限り、

ドライバ側とポート側の仕切り板を閉端と見なした場合の

トランスミッションラインの物理的な長さは、

約2.08mとなります。

ところが、スペックの有効ATL長さ(Effective ATL Length)は、

およそ1.5倍(高さの3倍)の3.3mとなっています。

これは、どういうことかと推測すると、

ドライバを閉端、ポートを開端とする直管と見なした場合の

有効長ということのようです。

思考実験としては、以下のような手順になります。

  1.  ドライバの位置をドライバ側の仕切り板の鏡像位置に展開する。
  2.  さらに、天板の鏡像位置に展開する。
  3. ポートの位置を仕切り板の鏡像位置に展開する。
  4. さらに、底版の鏡像位置に展開する。

この手順に基づいて、

曲がりを無視した1次元モデルで計算すると、

エンクロージャーの高さをhとした場合、

3hになることがわかります。

さらに、この設計モデルでは、

仕切り板と天板および底版の位置関係で、

定在波を比例分割できるため、

およそ1:2の位置にすると、

3, 5, 7倍の波長をアラインできるようです。

さらに、PMCの他のカットモデルの例をあげておきます。

ドライバだけオフセットしているモデル

ドライバとポートをオフセットして吸音材で長さを調整しているモデル

これは、試作して検証してみる価値がありそうです。

CHN-70とTBW-1000によるTLスピーカーの測定

トランスミッションラインで低域がどこまで出ているのか、

簡単な測定をしてみました。

 

利用したマイク、スペクトラムアナライザ、テストトーンをあげておきます。

iMM-6 iDevice Calibrated Measurement Microphone

AudioTool

60Hz Test Tone

55Hz Test Tone

50Hz Test Tone

 

まず、最終的に、TBW-1000の開口部の底面に

50mm厚の波形ウレタンフォームを入れました。

これで、およそ45x110x1,700mmの波導管になります。

閉管としての共振周波数は約50Hzとなります。

 

一方で、CHN-70の最低共振周波数は、

F0=71.62Hz となっています。

 

測定としては、単純で、

テストトーンを再生して、

スペクトラムアナライザで

レスポンスを見るというものです。

 

結果として、55Hzまで、

ほぼフラットに再生できることがわかりました。

 

ウッドベースの音程がよくわかります。

 

また、バスレフやバックロードホーンと違って、

空気のバネ要素(空気室)の影響が少なく、

開口部での遅れ要素が共鳴管長と音速によるもの(5ms程度)なので、

ニアフィールドで聴くと、

音像が少し後ろに位置する感じになります。

 

 

CHN-70とTBW-1000によるTLスピーカーの試作

CHN-70TBW-1000によるTLスピーカーの試作をまとめておきます。

 

設計としては、

導管の断面積はSd=50cm^2の、

長さが180cmの気柱管(共振周波数=50Hz)

を狙います。

つまり、ドライバユニットの後ろの9Lの空気を

コントロールすることになります。

 

つぎに、気柱管に生じる、

3次(150Hz),  5次(250Hz)の高調波を吸収して、

バンドパスフィルタを実現する必要があります。

TBW-1000の導管は幅が116mmで、

高さが、45mm, 55mm, 65mmと折り返しごとに、

徐々に広くなっているので、

これを打ち消す程度の厚みの吸音材を貼り付けます。

Sato エプトシーラー EE-1010

Sato カームフレックス F2-PRF13

Sato カームフレックス F2-PRF20

 

また、閉塞端と側面にも定在波を打ち消すために吸音材を貼り付けます。

 

最後の開放端の部分は高さが100mmあるので、

いろいろな調整ができますが、

穴あきのダクト用の消音材

50mm厚の波形ウレタンフォームなどを利用します。

 

こちらが、制作中の吸音材の様子です。

 

ドライバユニットを取り付けた後はこちらです。

 

音の方はといいますと、

バスレフ(WK10mFN, P43-123, NF5093)でCHN70を鳴らしたときと比較して、

ベースラインの明瞭感が素晴らしいです。

 

原理的にはヘルムホルツ共鳴閉管共鳴の違いとなります。

 

CHN-70の周波数特性曲線からすると、

聴感としては、

60Hzまではフラットに出ていると思われます。

 

スピーカーのエンクロージャーはどの方式がよいのか?

スピーカーのエンクロージャーの方式として、

代表的な密閉、バスレフ、トランスミッションラインの3つを考えます。

 

まず、それぞれの方式の参考になる記事などをまとめて起きます。

 

密閉

クリプトン渡邉氏がスピーカー開発キャリアを総括。「密閉型」「2ウェイ」にこだわる理由とは?

 

バスレフ

Bowers & Wilkins 805 D3

 

トランスミッションライン

TRANSMISSION LINES-THE REAL WORLD MEANS TO ENHANCED PERFORMANCE MONITORING

 

ここでは、エンクロージャーの役割は、

スピーカーユニットの背面に放出される音波のエネルギーの利用方法で特徴付けます。

 

まず、密閉は、エンクロージャーによって閉じ込められた音波のエネルギー(定在波)を吸音材によって、熱エネルギーに変換して捨てています。

つぎに、バスレフは、エンクロージャーの容積とバスレフポートによる、ヘルムホルツ共鳴によって、低域のエネルギーを再利用します。

最後に、トランスミッションラインは、一方の端が閉じた閉管による気柱共鳴によって、低域のエネルギーを再利用します。

 

定量化や定式化が難しい設計のポイントとして重要なのは、

エンクロージャー内部やポート、ベントの内部に生じる定在波や、

ポートやベントに生じる乱流による風切り音などをどう処理するかにあります。

 

また、エンクロージャーの方式によって、

背圧などのスピーカーユニットへの反作用も変わってくるため、

最適な組み合わせにならない場合もあります。

 

いずれにしても、

スピーカーの最適設計のためには、

基本的な物理と工学的実現方法を

理解する必要があります。