正負両電源に最適なカップルド・インダクタ

トランジスタ技術 2003年8月号 特集:ディジタル・アンプ誕生

第6章 出力電圧の精度と電源容量の決め方がポイント!
ディジタル・アンプ用電源回路の設計 :本田 潤   見本PDF 252Kバイト

Appendix
実際のディジタル・アンプ用スイッチング電源 :大和 一夫/狩野 ラワジフ

を読んでいて以下の記述を見つけました(p. 190)。

正負両電源に最適なカップルド・インダクタ

●軽負荷になると出力電圧が上昇する

>コイル電流のゼロ区間が生じることが原因

●対策はコイルに電流を流し続けること

>コイル電流にゼロ区間が生じる回路のコイルと、

コイル電流が流れ続ける回路のコイルとで、

コアを共有すると電流が連続的になります。

>>さて、D級出力段の電源は、

正負の出力回路のうち、

どちらか一方は必ず電流が流れているはずです。

となれば、カップルド・インダクタが

ディジタル・アンプ用電源に適していることは

自明の理ですね。

 

というわけで、LTSpiceで効果を検証してみました。

 

まず、LTC3722-1によるZVS-PSFBの

CTトランス(760895451)による正負両電源に、

カップルド・インダクタ(744844470)を適用した回路です。

センタータップによる両電源構成なので、

正負の電流の向きを考慮して、

カップルド・インダクタ(コモンモード・チョーク)を

平滑コンデンサの前に接続します。

 

次に、軽負荷(1kΩ, 100V(+-50V), 0.1A, 10W)時の

結合係数1の場合と0の場合における、

出力電圧(緑)とチョークコイルの電流(青)の

過渡解析による比較です

結合あり

結合なし

 

最後に重負荷((33Ω, 100V(+-50V), 3A, 300W)時の場合です。

結合あり

結合なし

 

興味深いことに結合ありの時は、

インダクタ電流の振幅(リップル)が小さくなって、

最大出力電圧が増大するようです。

 

磁気回路は奥が深いですね。

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