トロイダルトランスの電源投入時や短絡時の突入電流の評価を
SPICEシミュレーションするために、
モデルパラメータをデータシートから作成する方法を検討します。
nuvotem Toroidal Transformer, 300VA, 115Vx2, 35Vx2(RS Part No. 257-5231)をターゲットにします。
LT SPICEにおけるトランスのモデルはこちらの記事のように複数のインダクター(L)と結合定数(K)で定義できます。
LTspice: Simple Steps for Simulating Transformers
また、インダクターのパラメータとしては、インダクタンスと直列抵抗が必要です。
トランスのデータシートには、直列抵抗(Primary 2.4Ω, Secondary 0.3010Ω)は載っていますが、
インダクタンスは載っていないため、パラメータの推定が必要です。
トロイダルコイルのモデルはこちらを参照します。
2-1 インダクタンスの基礎
(c) トロイダルコイル
図2-3 トロイダルコイル
式(2.1.9)に、
データシートから読み取れる寸法(a=40mm(推定), b=58mm, 2r=115-40=75mm、
コアを鉄と仮定した透磁率(μ0μ=6.3xE-3)、
仮定の巻き数(N=100)をそれぞれ代入すると、
L=(6.3xE-3×100^2x40xE-3x58xE-3)/(75xE-3×3.14)=620mHとなります。
一方、Lは電圧の自乗(Primary 115V, Secondary(No Load) 37.88V)に比例するので、
Lp=115^2=13225xConst(mH)
Ls=37.88^2=1435xConst(mH)
また、L=2x(Lp+Ls)なので、
Const=620/(2x(13225+1435))=2.11E-2となります。
したがって、
Lp=13225×2.11E-2=279 mH
Ls=1435×2.11E-2=30.3 mH
となります。
結合係数(K)は、
鉄損(1.59W)が無負荷時の2次側定格(2×37.88[V]x4.286[A]=324.7[W])に生じるとして、
K=1-1.59/324.7=0.995
となります。
結局、トランスの場合、
インダクタンスは1次側と2次側の比率が重要なので、
大体でよい場合は、
1次側電圧、2次側電圧をそれぞれ自乗して
100mH程度のオーダーになるようにスケールすれば十分です。