スイッチング電源のコモンモードフィルタ(SNA-06-223-T)を入手したので、評価をまとめておきます。
こちらが、実際のD級アンプの電源(出力+-48V)(上からPFC、LLCコンバータ, SNAの構成) に組み込んだところです。

回路構成をみると、COMに接地コンデンサは付いていません。

コモンモードの減衰特性は100kHz-1MHzで-40dB程度となっています。

効果としては十分なようで、価格も手ごろなので、おすすめです。
LTspiceによる回路シミュレーション、EagleによるPCB設計、試作、EMSによる頒布まで
スイッチング電源のコモンモードフィルタ(SNA-06-223-T)を入手したので、評価をまとめておきます。
こちらが、実際のD級アンプの電源(出力+-48V)(上からPFC、LLCコンバータ, SNAの構成) に組み込んだところです。
回路構成をみると、COMに接地コンデンサは付いていません。
コモンモードの減衰特性は100kHz-1MHzで-40dB程度となっています。
効果としては十分なようで、価格も手ごろなので、おすすめです。
D級アンプの電源を臨界モードPFC+LLCコンバータにした場合、最大のコモンモードノイズ発生源は、PFCのホットループと整流用ブリッジダイオードになります。
また、シングルエンドのD級アンプの場合、グランドへの回り込みや飛び込みに対するCMRRの向上が対策のポイントになります。
ACインレットにフィルタ内蔵のものを利用しても、アース経路自体には何もフィルター要素がないので、アンプのシャーシ内部のアース線の引き回しによるノイズの影響は避けられません。
そこで、アースインダクタ(SNG-19DB-014)によるコモンモードループの対策を実施してみました。
写真上側の黄色と緑のアース線を巻いているトロイダルコイルがアースインダクタで、写真左側にPFCのホットループ(電解コンデンサ)と整流用ブリッジダイオードがあります。写真下側のトロイダルコイルはLLCコンバータの2次フィルタです。
SNG-19DB-014のインピーダンス特性をあげておきます。設計意図としては、オーディオ帯域(20-20kHz)よりも高い周波数のアースからの回り込みをブロックしたいということです。100kHzで20dB, 1MHzで40dB, 30Mhzで60dB程度の減衰率(インピーダンス上昇)になっています。
接続としては、コモンモードフィルタのYコンのアースライン(LLCコンバータの2次フィルタとD級アンプの2次フィルタ(L, R)の3つが集まっているアースポイント)とACインレットフィルタのアースポイントの間にアースインダクタを入れています。
実際の効果はかなりあります。能率92dBのスピーカー(CP15E)をニアフィールド(1.5m)程度の距離で聴いても、無信号時の雑音が気にならなくなりました。
D級アンプのPCBレイアウトで考慮すべき点をまとめておきます。
資料としてはこちらが参考になります。
AN136 非絶縁型スイッチング電源のPCBレイアウトにおける考慮事項
PFCやLLCコンバータのレイアウトにも役に立つポイントがたくさん載っているので、おすすめのアプリケーションノートです。
まず、AN139から降圧コンバータのホットループの図を引用します。
D級アンプはトポロジーとしては降圧コンバータなので、EMIの原因となる緑のホットループ(Cin, S1, S2)を最小化します。
具体的なPCBレイアウトの例として、AN136から図を引用します。
実際のシングルエンドで両電源のD級アンプだと、出力側の連続電流はプッシュプルでVoutの-とPGNDの電位が異なります。
次に、ゲート・ドライバの図を引用します。
基本的にゲートドライバの配線はループ面積が最小になるようにしますが、PGNDプレーンがあれば、ボトムサイドのリターン電流は自動的にAC結合するとあります。
実際のD級アンプで出力側が両電源の場合、PGNDの電位はマイナスになります。
次に、電流検出の図を引用します。
ケルビン検出(Rsense)のための配線のループ面積を最小にして、VIAからノイズを拾わないように注意となっています。
実際の電流モードのD級アンプでもLPFの出力の電流検出を行っています。
最後に、信号とパワーのグランドの分離の図を引用します。
実際のシングルエンドのD級アンプでは、信号グランドと出力のグランド(両電源の中点電位)の分離になります。PGNDに対しては絶縁かレベルシフトになります。
LLCコンバータの出力フィルタを試作しました。
こちらの記事が参考になります。
DC-DCコンバーターの出力フィルタリング
フィルターレイアウトを考える
主要部品:
インダクタ:B78108E
コモンモードチョーク:RT Series
設計パラメータ:
LLCコンバータの定格出力での2次側foper=180kHz(全波整流)として、
fc<18kHzとなるように、LCを選択。
出力フィルタの性能をLTspiceでシミュレーションしてみました。
リップル電圧としては、平滑後(緑: 100mV), DMフィルタ通過後(青: 1mV), CMフィルタ通過後(赤: 10uV)のオーダーです。
実際の音はというと、電流モードD級GaN FETアンプでの評価ですが、低域の出方と音像の広がり方が激変します。ノイズフロアが下がるのと、リニアレギュレータに匹敵するレベルまでリップルが下がるので、もはや異次元の音といった感じです。
リニア電源と違って、可聴帯域よりも高い周波数(>180kHz)のノイズなので、適切なフィルタ設計(fc<18kHz, -40dB/dec)で除去できるようです。
LLC共振ハーフブリッジ・コンバータを改良しました。
UCC28056AのPFCで、駆動しています。
DC390V入力, f0=100kHz, DC+-48V, 200W出力で設計しています。
主要部品としては、以下の部品を使用しています。
LLC共振コントローラ: UCC256404
LLC用トランス: 760895651
MOSFET: IPAN60R360PFD7S
2次側整流ダイオード: KMB220S
2次側オプトカプラ・ドライバ: LT4430
デジタル・アイソレータ: Si8710AC-B-IS
Excelの設計ツールは、
UCC25640x Design Calculator (Rev. C)
になっています。
負荷としてD級アンプを接続して、
バーストモードの設定をOption 6で、
Vbmt_h={0.417, 1.026, 1.667}Vを試しましたが、
トランスからジーっというノイズが出るため、
最終的に、バーストモードを無効(Option 7)としました。
D級アンプの場合、
無入力状態でも50%のデューティ比で動作しているため、
いわゆる待機状態にはならないので、
バーストモードは必須ではないと思います。
トロイダルトランスによるコンデンサインプットの電源よりも、
力率と整流ノイズの面で有利なので、
音にもそれがそのまま反映されてくる感じです。
UCC28056による遷移モードPFCの基板設計をまとめておきます。
主要部品としては、
PFCコントローラ:
PFC-Choke:
MOSFET:
Diode:
を使用しています。
なお、ZCD/CSは補助巻線から行っています。
UCC28056,Using Auxiliary winding voltage for driving ZCD/CS Pin (Rev. B)
また、補助電源はUC256404のRVCCから取得しています。
以下に設計のポイントをまとめておきます。
まず、UCC28056Bは、重負荷(4x 1,000uF x 48V)を起動できず、UCC28056Aでは問題なく起動できました。
PFCの名目電圧390Vに対して、Brown-in電圧が360Vと低くなるようなアプリケーションでは、OVP2が無効になっている必要があるようです。
また、UCC28056のVOSNSはOVPの検出にしか利用していないようで、制御はZCD/CSとCOMPだけで行っているようです。
計算ツール
UCC28056x Design Calculator (Rev. B)
が提供されていて、回路定数の設計そのものは容易です。
次に、Valley Delay Adjustment(Rdg)の設計ですが、
IPAN60R210PFD7SのCo(tr)=330pFと
760805410のL=225uHから、
Tzdcr=2*3.14*sqrt(330*225)/4=428nsとなり、
Tzcdr0=170ns, dTzcdr5=255nsから、
Rdg5=18k Ohm
を選択しています。
最後に、待機電力の削減に関する、参考資料をまとめておきます。
Optimizing Efficiency and Standby Power With the UCC28056 in Offline Application (Rev. B)
Exceeding Modern Energy Standards with ‘Always On’ PFC and LLC Controllers (Rev. B)
高価なケーブルはいい音がすると思いますか?
値段に応じた品質しか手に入らないというのは、単なる思い込みです。
値段は希少性に付いているのであって、音質に付いているわけではありません。
業者は、高価なケーブルを買ってしまう希少なあなたを狙っているわけです。
もちろん、高価なエフェクターと割り切って買う分には問題ありません。
電気工学的には当たり前ですが、心理学的には不都合な真実をまとめておきます。
まず、絶縁をすると何がおきるのか、試してみてください。
信号ケーブルを買い換える前に、絶縁トランス(HD400)を試してみてください。
電源ケーブルを買い換える前に、絶縁トランス(ギタリスト電源)を試してみてください。
アンプとスピーカーを信号系と電源系から絶縁するだけで、音が激変すると思います。
これはなぜでしょうか?
信号系は、PCであろうが、CDトランスポートであろうが、AD/DAであろうが、グランドに起因するノイズを伝播します。それを絶縁するわけです。もちろん、絶縁トランスの帯域に起因する問題とのトレードオフですが。
電源系も同様です。日本の場合、ニュートラルが接地されているので、完全に絶縁するためには、電源トランスで行うか、絶縁トランスを使用しているAC/DCコンバータを使用します。
トランスで減圧した後にSiC SBDなどで整流する場合、電源の周波数に起因する整流ノイズ(100/120Hz)は避けられないことに注意が必要です。
なので、良くできた絶縁型AC/DCコンバータ(PFC/LLC)の方が、可聴帯域の2次側のノイズは、低くなることに注意が必要です。
また、信号系のDC結合とAC結合も低域のカットオフとグランド起因のノイズのデカップリングとのトレードオフになることに注意が必要です。
回路や方式はモデルであって、実際の実装に起因するトレードオフは捨象されていることに注意が必要です。
マーケティング的には、不都合な真実は決して語られることがありません。
科学的な文脈と心理学的な物語は別物です。
UCC28056による遷移モードPFCの基板設計をまとめておきます。
主要部品としては、
PFCコントローラ:
UCC28056B
PFC-Choke:
MOSFET:
Diode:
Buck Converer IC:
を想定しています。
ZCDは補助巻線から行い、
補助電源は降圧コンバータを利用します。
Eagleの回路図です。
Eagleの配線図です。
PFC-Chokeはどちらでもさせるようにしました。
Eagleの基板上面のパターンです。
大電流が流れるところをポリゴンにしています。
Eagleの基板下面のパターンです。
大電流が流れるところと基準電位になるところをポリゴンにしています。
UCC28056による遷移モードPFCの回路設計をまとめておきます。
特徴としては、
CrM(臨界モード)とDCM(不連続導通モード)に
バレースイッチングが組み合わせれているようです。
ディバイスとしては、機能の違いや組み合わせで、4種類あるようです。
ZCDをMOSFETのオン抵抗で行う以外に、
PFC Chokeの補助巻線で行う方法もあるようです。
UCC28056x, Using Auxiliary Winding Voltage for Driving ZCD/CSPin
回路設計はユーザーガイドなどを参考に、
UCC28056 BEVM-296 Evaluation Module
計算ツールで回路定数を決められます。
UCC28056x Design Calculator (Rev. B)
トランスの補助巻線による電源供給について補足です。
100-W Universal Line Input PFCBoost Converter Using theUCC38050
では、補助巻線の出力をC7:100 uF, R10: 220 Ohm 1W, C6: 100 uFでフィルターしています。
を用いて、
250m Ohm, 100uF, 220 Ohm 100uFで計算してみると、
fc=214Hz, -80dB@20kHzとなることがわかります。
比較のために、
を用いて、
250m Ohm, 220uFで計算してみると、
fc=2894Hz, -20dB@30kHzとなることがわかります。
LTspiceによるシミュレーションでも、
容易に確認できますが、
補助巻線の周波数が100kHzと高いため、
平滑コンデンサの分割(Split Reservoir Capacitor)による
フィルタ構成の効果が大きいことがわかります。