D級アンプのデメリット解消と音質改善

D級オーディオパワーアンプにおけるデメリットの解消方法と音質改善につてまとめておきます。

以下のリンクが参考になります。

アプリケーションノート 3977 D級アンプ:基本動作と開発動向

ZVS自励発振式電流モードD級アンプ

最初に、一般的なD級オーディオパワーアンプの設計課題をあげておきます。

  1. PSRRの向上
  2. 周波数特性の向上
  3. スイッチングノイズ対策(EMI)の向上

まず、PSRRの向上に関しては、スイッチングノード(プリフィルタ)のフィードバックが必要です。

実際の設計としては、電圧モードの自励発振式(ΣΔ変調)での対応が容易です。

次に、周波数特性の向上に関しては、ポストフィルタのフィードバックが必要です。

実際の設計としては、電流モード(インダクタ電流検出)の他励式として状態フィードバックによるPI制御での対応が容易です。

最後にEMIの向上に関しては、ZVS、CMC、スペクトラム拡散(自励発振式のPDM)での対応が容易です。

BTLであれば、フィルタレス変調方式(3レベルPWM)もありますが、より複雑になります。

最近の薄型テレビやスマートフォンなどはICによるD級アンプですが、音質に不満はありません。

また、試作したZVS自励発振式電流モードD級アンプの音質も、電源からトータルで回路設計を詰めたので、十分な基本性能(SNR, 周波数特性)に到達しています。

スペックで評価できない動的な聴感としては、トリオジャズのベース、ピアノ、キック、ブラシ、シンバル、ミュージシャンのハミングがUSBインタフェース(DAC)のヘッドホン出力で聴くよりもリアルにスピーカー(8cm/38cm)で音楽を体感できます。

スイッチング電源はオーディオに不向きなのか?

オーディパワーアンプにおけるスイッチング電源のノイズ対策をまとめておきます。

以下のリンクが参考になります。

スイッチング・レギュレータのノイズを包括的に理解する

PFC+LLC+CMCによるオーディオ用スイッチング電源

まず、3つのノイズに対する対応は以下の通りです。

  1. リップルノイズは、フィルタ(LC)で対応します。
  2. 広帯域ノイズは、回路設計(IC)やプリント基板のレイアウトで対応します。
  3. スパイクノイズは、ZVS(BCM PFC, LLC DC/DC)で対応します。

一方、ノイズを発生するスイッチング電源側の対策だけでは不十分です。

特に、スイッチング電源の基板やケーブルから伝導および放射されるコモンモードノイズ対策としては、アンプ基板の入力信号の伝送方式で対応します。

具体的にはアンプの入力部をバランス入力およびラインレシーバ(差動増幅)にすることで対応します。

また、コモンモードループの対策も重要で、アースインダクタやCMCで対応します。

TL431によるオプトカプラ・ドライバ回路の試作

D級アンプで使用している絶縁型LLCコンバータでTL431とオプトカプラ(6N136, TLP559, TLP2304)を用いた回路の試作を行ったのでまとめておきます。

TLP2304とTL431によるフィードバック回路

写真中央下部のSOIC8の変換基板がTLP2304でその右側のTO-92がTL431です。

オプトカプラも種類がいろいろありますが、ここではLLCコンバータがfsw=100kHzなので、1MbpsのオープンドレインのPhoto IC(UCC256404のRVCC=13Vで駆動)を選択しています。

同じ定数で、TLP2304, TLP559, 6N136が問題なく動作しました。プロパゲーションディレイと入力容量がそれぞれ異なるので、理論的には電源のトランジェントに影響があるはずですが、D級アンプの出力の聴感で判断するのは難しいと思います。

なお、東芝の6N136, TLP559は生産終了予定となっています。

また、オプトカプラの経年劣化(CTRの低下)が問題になる場合は、Si87xx(Si8710CC, Si8710CD)を選択しますが、現在のところ半導体不足の影響で入手困難です。

TL431によるオプトカプラ・ドライバ回路 その2

絶縁型LLCコンバータなどで2次側の電圧を1次側にフィードバックするためのTL431とオプトカプラの位相補償をまとめておきます。

以下の資料が参考になります。

The TL431 in the Control of Switching Power Supplies

The TL431 in a Modified Type 2 Configuration

DC-DC Converters Feedback and Control

Modeling and Loop Compensation Design of Switching Mode Power Supplies

Demystifying Type II and Type III Compensators Using Op-Amp and OTA for DC/DC Converters

The TL431 in the Control of Switching Power Suppliesからスライドを引用します。

How is Regulation Performed?

絶縁型DC-DCコンバータ用ICのデータシートや、アプリケーションノート、設計ツールでもTL431とOptocouplerの位相補償についてはほとんど触れていないので、設計に際しては基礎的なところから理解しておくことが必要です。

制御と回路の基礎知識があれば順を追って理解できる資料だと思いますが、いかがでしょうか。

TL431によるオプトカプラ・ドライバ回路

絶縁型LLCコンバータなどで2次側の電圧を1次側にフィードバックするためのTL431とオプトカプラ(MOC207)による回路をまとめておきます。

以下の資料が参考になります。

Shunt Regulator Design Procedures for Secondary Feedback Loop in Isolated Converter

Setting the Shunt Voltage on an Adjustable Shunt Regulator

Compensation Design With TL431 for UCC28600

まず、LTspiceによる回路図と過渡応答を示します。

TL431とMOC207による2次側電圧FB回路
TL431とMOC207による2次側電圧FB回路の過渡応答

設計手順としては以下の通りです。

  1. Vref=2.495Vになるように分圧回路を設定
  2. フォトダイオードとTL431へのバイアス電流を設定
  3. TypeIIの位相補償回路を設定

2次側はフォトダイオードのローサイドにシャントレギュレータを配置する構成になります。

1次側はコントローラのFBピンの仕様に応じてオープンコレクタ出力をエミッタ共通かコレクタ共通の構成になります。

スイッチング電源のコモンモードフィルタの評価

スイッチング電源のコモンモードフィルタ(SNA-06-223-T)を入手したので、評価をまとめておきます。

こちらが、実際のD級アンプの電源(出力+-48V)(上からPFC、LLCコンバータ, SNAの構成) に組み込んだところです。

SNA-06-223-T

回路構成をみると、COMに接地コンデンサは付いていません。

SNA-06-223(回路構成)

コモンモードの減衰特性は100kHz-1MHzで-40dB程度となっています。

SNA-06-223(減衰特性)

効果としては十分なようで、価格も手ごろなので、おすすめです。

アースインダクタによるコモンモードノイズ対策

D級アンプの電源を臨界モードPFC+LLCコンバータにした場合、最大のコモンモードノイズ発生源は、PFCのホットループと整流用ブリッジダイオードになります。

また、シングルエンドのD級アンプの場合、グランドへの回り込みや飛び込みに対するCMRRの向上が対策のポイントになります。

ACインレットにフィルタ内蔵のものを利用しても、アース経路自体には何もフィルター要素がないので、アンプのシャーシ内部のアース線の引き回しによるノイズの影響は避けられません。

そこで、アースインダクタ(SNG-19DB-014)によるコモンモードループの対策を実施してみました。

SNG-19DB-014の実装例

写真上側の黄色と緑のアース線を巻いているトロイダルコイルがアースインダクタで、写真左側にPFCのホットループ(電解コンデンサ)と整流用ブリッジダイオードがあります。写真下側のトロイダルコイルはLLCコンバータの2次フィルタです。

SNG-19DB-014インピーダンス特性

SNG-19DB-014のインピーダンス特性をあげておきます。設計意図としては、オーディオ帯域(20-20kHz)よりも高い周波数のアースからの回り込みをブロックしたいということです。100kHzで20dB, 1MHzで40dB, 30Mhzで60dB程度の減衰率(インピーダンス上昇)になっています。

接続としては、コモンモードフィルタのYコンのアースライン(LLCコンバータの2次フィルタとD級アンプの2次フィルタ(L, R)の3つが集まっているアースポイント)とACインレットフィルタのアースポイントの間にアースインダクタを入れています。

実際の効果はかなりあります。能率92dBのスピーカー(CP15E)をニアフィールド(1.5m)程度の距離で聴いても、無信号時の雑音が気にならなくなりました。

D級アンプのPCBレイアウト

D級アンプのPCBレイアウトで考慮すべき点をまとめておきます。

資料としてはこちらが参考になります。

AN139 電源レイアウトとEMI

AN136 非絶縁型スイッチング電源のPCBレイアウトにおける考慮事項

PFCやLLCコンバータのレイアウトにも役に立つポイントがたくさん載っているので、おすすめのアプリケーションノートです。

まず、AN139から降圧コンバータのホットループの図を引用します。

降圧コンバータのホットループ

D級アンプはトポロジーとしては降圧コンバータなので、EMIの原因となる緑のホットループ(Cin, S1, S2)を最小化します。

具体的なPCBレイアウトの例として、AN136から図を引用します。

降圧コンバータのレイアウト例

実際のシングルエンドで両電源のD級アンプだと、出力側の連続電流はプッシュプルでVoutの-とPGNDの電位が異なります。

次に、ゲート・ドライバの図を引用します。

ゲート・ドライバのレイアウト例

基本的にゲートドライバの配線はループ面積が最小になるようにしますが、PGNDプレーンがあれば、ボトムサイドのリターン電流は自動的にAC結合するとあります。

実際のD級アンプで出力側が両電源の場合、PGNDの電位はマイナスになります。

次に、電流検出の図を引用します。

電流検出のレイアウト例

ケルビン検出(Rsense)のための配線のループ面積を最小にして、VIAからノイズを拾わないように注意となっています。

実際の電流モードのD級アンプでもLPFの出力の電流検出を行っています。

最後に、信号とパワーのグランドの分離の図を引用します。

実際のシングルエンドのD級アンプでは、信号グランドと出力のグランド(両電源の中点電位)の分離になります。PGNDに対しては絶縁かレベルシフトになります。

LLCコンバータの出力フィルタの試作

LLCコンバータの出力フィルタを試作しました。

こちらの記事が参考になります。

DC-DCコンバーターの出力フィルタリング
フィルターレイアウトを考える

主要部品:

インダクタ:B78108E

コモンモードチョーク:RT Series

設計パラメータ:

LLCコンバータの定格出力での2次側foper=180kHz(全波整流)として、

fc<18kHzとなるように、LCを選択。

 

出力フィルタの性能をLTspiceでシミュレーションしてみました。

リップル電圧としては、平滑後(緑: 100mV), DMフィルタ通過後(青: 1mV), CMフィルタ通過後(赤: 10uV)のオーダーです。

LTspiceの回路図
平滑後の正側レール電圧のFFT
DMフィルタ通過後の正側レール電圧のFFT
CMフィルタ通過後の正側レール電圧のFFT
試作した出力フィルタ

実際の音はというと、電流モードD級GaN FETアンプでの評価ですが、低域の出方と音像の広がり方が激変します。ノイズフロアが下がるのと、リニアレギュレータに匹敵するレベルまでリップルが下がるので、もはや異次元の音といった感じです。

リニア電源と違って、可聴帯域よりも高い周波数(>180kHz)のノイズなので、適切なフィルタ設計(fc<18kHz, -40dB/dec)で除去できるようです。

LLC共振ハーフブリッジ・コンバータの試作その2

LLC共振ハーフブリッジ・コンバータを改良しました。

UCC28056AのPFCで、駆動しています。

DC390V入力,  f0=100kHz, DC+-48V, 200W出力で設計しています。

主要部品としては、以下の部品を使用しています。

LLC共振コントローラ: UCC256404

LLC用トランス: 760895651

MOSFET: IPAN60R360PFD7S

2次側整流ダイオード: KMB220S

2次側オプトカプラ・ドライバ: LT4430

デジタル・アイソレータ: Si8710AC-B-IS

Excelの設計ツールは、

UCC25640x Design Calculator (Rev. C)

になっています。

負荷としてD級アンプを接続して、

バーストモードの設定をOption 6で、

Vbmt_h={0.417, 1.026, 1.667}Vを試しましたが、

トランスからジーっというノイズが出るため、

最終的に、バーストモードを無効(Option 7)としました。

D級アンプの場合、

無入力状態でも50%のデューティ比で動作しているため、

いわゆる待機状態にはならないので、

バーストモードは必須ではないと思います。

トロイダルトランスによるコンデンサインプットの電源よりも、

力率と整流ノイズの面で有利なので、

音にもそれがそのまま反映されてくる感じです。