LT1166によるUHC MOSFETアンプの試作

IPP129N10NF2S, TTC004B, TTA004Bを用いた、LT1166によるUHC MOSFETアンプのバイアス設定と位相補償をまとめておきます。

こちらの記事を参考にしています。

9.5.4 DC Biasing techniques with emitter/source degeneration

UHC MOSFETアンプの回路図

ドミナントポールを88kHz(ゲイン段(A)の補償容量:C1=5pFで設定)にしています。

LT1363の積分回路は1kΩ, 220pFとしています。

LT1166の外部補償容量は10pFとしています。

ダーリントンドライバ(TTC004B, TTA004B)のエミッタ抵抗およびコレクタ抵抗は220Ωとして静止電流を16mAとしています。また、エミッタ抵抗のバイパスコンデンサは100pFとしています。

ゲートストッパーは220Ωにしています。

出力電圧(D)のゲイン位相図

位相余裕とゲイン余裕は以下のようになりました。

D: PM@1.9MHz=78deg, GM@16MHz=-22dB

IPP129N UHC MOSFETアンプ

音は、IRF530N, IRF9530NのコンプリメンタリMOSFETアンプとの比較では、よりすっきりした感じです。

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LT1166による準コンプリメンタリMOSFETアンプのバイアス設定と位相補償

IRF530N, TTC004B, TTA004Bを用いた、LT1166によるMOSFETアンプのバイアス設定と位相補償をまとめておきます。

こちらの記事を参考にしています。

9.5.4 DC Biasing techniques with emitter/source degeneration

準コンプリメンタリMOSFETアンプの回路図

C3M0120090DによるAB級 SiC MOSFETアンプの回路設計の記事で、エミッタディジェネレーションによる準コンプリメンタリは、ゲイン20倍、電源レール+-48Vに対して、出力電圧の振幅が制限(+-20V程度)されていましたが、バイパスコンデンサ(100pF)をエミッタ抵抗(150Ω)につけると十分な出力電圧の振幅(+-30V程度)が確保できるようです。

また、電流源駆動段(C)の位相余裕を確保するために、ドミナントポールを30kHz(ゲイン段(A)の補償容量:C1=22pFで設定)にしています。

なお、ダーリントンドライバ(TTC004B, TTA004B)のエミッタ抵抗およびコレクタ抵抗は150Ωとして制止電流を30mA(1W)としています。

増幅段(A), フィードフォワード段(B), 電流源駆動段(C), 出力電圧(D)のゲイン位相図

いつか機会があれば、試作して音も確認したいと思います。

LT1166による電流源駆動MOSFETアンプの位相補償その2

IRF530N, IRF9530Nを用いた、LT1166によるMOSFETアンプの位相補償をまとめておきます。

こちらのリンクが参考になります。

良く使われる回路での高域特性限界: 4、フォロワ型アンプ出力段 (ダーリントンの有無)

電流源駆動MOSFETアンプの回路図

出力オフセットを安定させるために定数を一部見直しました。

まずLT1166の補償容量を100pFから10pFに変更しています。

また、ゲートドレインゾーベルの抵抗値を100Ωから220Ωに変更しています。

出力電圧(D)のゲイン位相図

定数変更後の、出力電圧(D)の位相余裕とゲイン余裕は次のようになります。
PM=75deg@1.8MHz, GM=-21dB@26MHz

定電流源を変調するオペアンプ(LT1360)のゼロ周波数が15MHz付近にあるのと、ゲートドレインゾーベルのカットオフ周波数が3.3MHzなので、20-30MHzに変曲点が現れます。

LT1166による電流源駆動MOSFETアンプの位相補償

IRF530N, IRF9530Nを用いた、LT1166によるMOSFETアンプの位相補償をまとめておきます。

こちらのリンクが参考になります。

良く使われる回路での高域特性限界: 4、フォロワ型アンプ出力段 (ダーリントンの有無)

電流源駆動MOSFETアンプの回路図

最終的な、LTSpiceによる回路図をしめします。

3段ダーリントンBJTアンプとほぼ同じですが、調整した箇所があります。

まず、電流源のエミッタ抵抗を68Ωにして、LT1166のItop/Ibottomを22mAに設定します。これで、矩形波の大信号入力時にもItop/Ibottom>4mAとなります。

1.5V, 10kHz矩形波信号入力時のItop/Ibottom

次にバイアス回路(LT1166)の補償容量を100pF, 出力段(MOSFET)のゲート抵抗を100Ω、ゲートドレインゾーベルを100Ω, 220pFにそれぞれ設定します。

出力電圧(D)のゲイン位相図

出力の位相余裕とゲイン余裕は次のようになります。
PM=69deg@1.9MHz, GM=-23dB@18MHz

なお、MOSFETの入力容量(Ciss)とフォワードトランスコンダクタンス(gfs)は以下の通りです。

IRF530: 920pF, 12S

IRF9530: 760pF, 3.2S

コンプリメンタリとはいってもかなり特性に違いがあります。

電流源駆動MOSFETアンプ

実際に試作してみましたが、音質としてはBJTアンプよりもやや太い感じです。

もちろん、ブートストラップ電源と出力段のバイパスコンデンサの違いによる影響もありますが。

部品数が3段ダーリントンBJTアンプよりも少ないので、こちらの方が手軽に製作できます。

LT1166による3段ダーリントンBJTアンプの位相補償その2

2N5551, 2N5401, TTC004B, TTA004B, TTC5200, TTA1943を用いた、LT1166による3段ダーリントン(Triple)BJTアンプの位相補償をまとめておきます。

こちらのリンクが参考になります。

良く使われる回路での高域特性限界: 4、フォロワ型アンプ出力段 (ダーリントンの有無)

3段ダーリントンBJTアンプの回路図

最終的な、LTSpiceによる回路図をしめします。

まず、ドミナントポールを決める入力および増幅段の差動増幅回路(LT1360, Av=27dB)のCMRRの補償容量を5pFにしてfc=88kHzとなります。

次に、フィードフォワードを決める積分回路(LT1363)をfc(1kΩ, 220pF)=720kHzとしています。この入力抵抗の値はVosに影響するようです。

無信号入力時の出力電圧(700uV)

最後にバイアス回路(LT1166)の補償容量を330pFとして、セカンドポールを26MHzとしています。

出力電圧(D)のゲイン位相図

出力の位相余裕とゲイン余裕は次のようになります。
PM: 81deg@2.0MHz
GM: -16dB@14MHz

LT1166による3段ダーリントンBJTアンプの発振対策その2

2N5551, 2N5401, TTC004B, TTA004B, TTC5200, TTA1943を用いた、LT1166による3段ダーリントン(Triple)BJTアンプの発振対策をまとめておきます。

3段ダーリントンBJTアンプの回路図

まず、LTSpiceによる回路図をしめします。

以前はプリドライバ段、ドライバ段、パワー段に1Ωのベースストッパーを入れていましたが、最終的にパワー段にだけベースストッパーとして1Ωを入れています。

次に、電源レールのデカップリングとして、ドライバ段のコレクタにfc(1Ω, 0.1uF)=1.6MHz、プリドライバ段のコレクタに10Ωを入れています。

最後に、ベースコレクタゾーベルとして、fc(47Ω, 220pF)=15MHzをパワー段のベースコレクタ間に入れています。

ここで、プリドライバ段、ドライバ段、パワー段のfT(トランジション周波数)とCob(コレクタ出力容量)は以下のとおりです。

BJT(fT(MHz), Cob(pF)) =
2N5551(300, 6.0)
2N5401(400, 6.0)
TTC004B(100, 12)
TTA004B(100, 17)
TTC5200(30, 145)
TTA1943(30, 240)

コンプリメンタリBJTとはいっても、特性差は顕著で、パワー段のコレクタ出力容量が支配的になります。

以下に出力(パワー段のエミッタ抵抗の合流地点)の過渡解析によるFFTをしめします。

無信号入力時のパワー段の出力電圧の周波数特性

無信号時は-200dB以下のノイズフロアとなっています。

65mV正弦波入力時のパワー段の出力電圧の周波数特性

小信号入力時でもSNは120dBあります。

LT1166のクローズドループのユニティゲイン周波数が1.3MHz低度なので、このような折り返しノイズになるようです。

また、BJTの出力容量に起因するピークが顕著に現れます。

1.5V正弦波入力時のパワー段の出力電圧の周波数特性

大信号入力時でもSNは120dBあります。

奇数次の高調波が顕著に現れます。

LT1166による3段ダーリントンBJTアンプの最適バイアス抵抗その2

2N5551, 2N5401, TTC004B, TTA004B, TTC5200, TTA1943を用いた、LT1166による3段ダーリントン(Triple)BJTアンプの最適バイアス抵抗のまとめです。

3段ダーリントンBJTアンプの回路図

まず、LTSpiceによる回路図をしめします。

結論としては、プリドライバ段およびドライバ段のクロスオーバー時の電流波形とピーク時のコレクタ損失で決定しています。

アイドル時のプリドライバ段のエミッタ抵抗は470Ω(5.2mA)、ドライバ段のエミッタ抵抗は220Ω(5.7mA)、パワー段のエミッタ抵抗を0.22Ω(91mA)としています。

1.5V正弦波入力時のプリドライバ段、ドライバ段、パワー段のエミッタ電流

最大出力時のプリドライバ段とドライバ段のエミッタ抵抗を流れる電流波形のディップがなめらかになっています。

エミッタ抵抗を大きくするとこのディップが深くなって、波形が乱れます。

1.5V正弦波入力時のプリドライバ段、ドライバ段、パワー段のコレクタ損失

最大出力次のプリドライバ段とドライバ段のコレクタ損失の波形です。

プリドライバ段は上下非対称の正弦波となります。

また、ドライバ段はパワー段と同様の出力時のピークが凹んだ半波状の波形となります。

LLCコンバータのLTspiceシミュレーションその3

LLCコンバータ(LCS705)の周波数制御のビヘイビアモデルをLTSpiceでシミュレーションする方法をまとめておきます。

こちらのリンクが参考になります。

HiperLCS Data Sheet

B sources (complete reference)

ビヘイビアで簡単Spiceシミュレーション②

LTspice入門:デジタル素子によるシミュレーション

LTSpiceモデルのポイントとしては、ビヘイビア電源に必要な関数を定義しています。

.param CVI=0.024 DTIME=420n VGATE=10
.func itof(i)=CVI*i
.func tper(f)= time/f
.func saw(f)= tper(f)-int(tper(f))
.func pwm(f)=if(saw(f) , VGATE, 0)
.func dly(f)=delay(pwm(f), DTIME)

itof(i): 周波数制御信号(LCS705のFBピン)の入力電流(A)を周波数制御電圧(V)に変換する。

tper(f): 周波数(Hz)を周期(sec)に変換

saw(f): 周期からのこぎり波(0-1V)を生成

pwm(f): のこぎり波から矩形波(0-10V)を生成

dly(f): デッドタイムだけ遅れた波形を生成

pwm(f)とdly(f)からANDとNORでデッドタイムを反映したハイサイドおよびローサイドの駆動波形を生成しています。

LTSpiceの回路図です。2次側の電圧検出をシャントレギュレータ(TL431)で行い、オプトカプラ(TLP2304)を利用して、1次側のFBピン(LCS705)を駆動しています。

LTSpiceの過渡解析の結果です。

2次側出力電圧(緑)、

FB電流(青)

をプロットしています。

FB電流が500uA-400uA(120kHz-100kHz)に変化して、出力電圧が制御されていることがわかります。

電源ケーブルとインシュレータで音が変わるのはオカルトか?

こちらの資料が参考になります。

AN-358 ノイズとオペアンプ回路

TINA-TITMによるオペアンプ回路設計入門 (第12回) 2.2 入力バイアス電流

まず、どれくらいの大きさの変化がノイズ(最小の信号)として、電源、ケーブル、振動に起因するのかを定量的に理解しておく必要があります。

また、現象としてわかりやすいのは、MLCCやコイル(トランス)の鳴きですが、機械的な変位(振動)が容量の変位を引き起こして電流が変動することを理解しておく必要があります。

代表的な干渉ノイズ発生源

つぎにオペアンプの入力バイアス電流の大きさを考えてみます。

代表的なオペアンプの入力バイアス電流の範囲

オーディオ用のオペアンプだとおよそnAからpAの範囲になります。オープンループゲインが120dBのオペアンプで10kΩの抵抗を利用して増幅回路を実装すれば、容易にuVの電圧信号として知覚できることになります。

一方で、スピーカーの能率が84dBで、アンプの増幅率が26dBとすれば、-110dBのノイズフロアより小さな1uV(-120dB)の信号は埋もれてしまいます。

ノイズは一定の強度で常に存在しているので、十分なPSRRやCMRRを達成して必要な信号帯域を確保することで、信号増幅は成立しています。

また、オーディオ再生に際して、オーディオ信号自体を電気信号から機械信号(空気の粗密波)に変換しているので、可聴帯域の機械振動による相互変調(共振)は、大きさのある機械としてオーディオシステムを実装している以上、物理的に不可避です。

D級アンプにおけるオペアンプの音質への影響 その6

自励発振式のD級アンプにおける2回路オペアンプの積分回路でのIcmrr(IbとVcmの傾き)の評価をまとめておきます。

こちらの資料を参考にしています。

ppmレベルの精度のオペアンプ回路は実現できるのか?

ICMRR

入力信号のコモンモード・レベルに関連するのは、入力バイアス電流と、電源に伴うその変化であるICMRRです。
図1に示したように、ICMRRは4つに細分化されます。記号の折れ線は、バイアス電流が電圧に応じて可変であり、線形でない可能性があるということを表しています。2つの入力のバイアス電流とレベルへの依存度は異なる可能性があります。また、各入力は、両方の電源に応じて独立して変化します。ICMRR(合算することによりバイアス電流が決まります)により、アプリケーション抵抗の値との乗算で決まる電圧ノイズが生成され、回路全体のオフセット電圧が増加します。

ppmレベルの精度のアンプ回路は実現できるのか?

データシートのグラフから算出したIcmrrをまとめておきます。

ppm レベルの精度を得るために必要なオペアンプのパラメータの比較

IbとVcmのグラフをデータシートより引用します。

OPA2227

OPA2227

ADA4001-2

ADA4001-2

ADA4075-2

ADA4075-2

OPA2134

OPA2134

LT1057

LT1057

LT1213

LT1213

LT1113

LT1113

JFT入力のオペアンプはIbが小さいので問題になりませんが、BJT入力のオペアンプは注意が必要です。

なお、OPA2227の値が小さいのは入力バイアス電流を内部で補償しているからのようです。