電源ケーブルとインシュレータで音が変わるのはオカルトか?

こちらの資料が参考になります。

AN-358 ノイズとオペアンプ回路

TINA-TITMによるオペアンプ回路設計入門 (第12回) 2.2 入力バイアス電流

まず、どれくらいの大きさの変化がノイズ(最小の信号)として、電源、ケーブル、振動に起因するのかを定量的に理解しておく必要があります。

また、現象としてわかりやすいのは、MLCCやコイル(トランス)の鳴きですが、機械的な変位(振動)が容量の変位を引き起こして電流が変動することを理解しておく必要があります。

代表的な干渉ノイズ発生源

つぎにオペアンプの入力バイアス電流の大きさを考えてみます。

代表的なオペアンプの入力バイアス電流の範囲

オーディオ用のオペアンプだとおよそnAからpAの範囲になります。オープンループゲインが120dBのオペアンプで10kΩの抵抗を利用して増幅回路を実装すれば、容易にuVの電圧信号として知覚できることになります。

一方で、スピーカーの能率が84dBで、アンプの増幅率が26dBとすれば、-110dBのノイズフロアより小さな1uV(-120dB)の信号は埋もれてしまいます。

ノイズは一定の強度で常に存在しているので、十分なPSRRやCMRRを達成して必要な信号帯域を確保することで、信号増幅は成立しています。

また、オーディオ再生に際して、オーディオ信号自体を電気信号から機械信号(空気の粗密波)に変換しているので、可聴帯域の機械振動による相互変調(共振)は、大きさのある機械としてオーディオシステムを実装している以上、物理的に不可避です。

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D級アンプにおけるオペアンプの音質への影響 その6

自励発振式のD級アンプにおける2回路オペアンプの積分回路でのIcmrr(IbとVcmの傾き)の評価をまとめておきます。

こちらの資料を参考にしています。

ppmレベルの精度のオペアンプ回路は実現できるのか?

ICMRR

入力信号のコモンモード・レベルに関連するのは、入力バイアス電流と、電源に伴うその変化であるICMRRです。
図1に示したように、ICMRRは4つに細分化されます。記号の折れ線は、バイアス電流が電圧に応じて可変であり、線形でない可能性があるということを表しています。2つの入力のバイアス電流とレベルへの依存度は異なる可能性があります。また、各入力は、両方の電源に応じて独立して変化します。ICMRR(合算することによりバイアス電流が決まります)により、アプリケーション抵抗の値との乗算で決まる電圧ノイズが生成され、回路全体のオフセット電圧が増加します。

ppmレベルの精度のアンプ回路は実現できるのか?

データシートのグラフから算出したIcmrrをまとめておきます。

ppm レベルの精度を得るために必要なオペアンプのパラメータの比較

IbとVcmのグラフをデータシートより引用します。

OPA2227

OPA2227

ADA4001-2

ADA4001-2

ADA4075-2

ADA4075-2

OPA2134

OPA2134

LT1057

LT1057

LT1213

LT1213

LT1113

LT1113

JFT入力のオペアンプはIbが小さいので問題になりませんが、BJT入力のオペアンプは注意が必要です。

なお、OPA2227の値が小さいのは入力バイアス電流を内部で補償しているからのようです。

D級アンプにおけるオペアンプの音質への影響 その5

自励発振式のD級アンプにおける2回路オペアンプの積分回路でのTHD+NとVosの評価をまとめておきます。

こちらの資料を参考にしています。

ppmレベルの精度のオペアンプ回路は実現できるのか?

一方、オーディオ・アンプに相当するオペアンプ製品の場合、かなり安価であるのにもかかわらず、歪み性能が非常に高いものがあります。

但し、オフセットと1/fノイズを抑えるようには設計されていないため、それらの性能は良好ではありません。

また、この種のアンプも、おそらく10kHzを超える領域では、高い歪み性能を発揮することはできないはずです。

ppmレベルの精度のアンプ回路は実現できるのか?

そこで、THD+NとVosの関係に着目してみます。

データシートの値とD級アンプ・アプリケーションでのVosの実測値です。

ppm レベルの精度を得るために必要なオペアンプのパラメータの比較

THD+Nの周波数特性のグラフをデータシートより引用します。

OPA2227

OPA2227

ADA4001-2

ADA4001-2

ADA4075-2

ADA4075-2

AD8672

AD8672

OPA2134

OPA2134

LM4562

LM4562

LT1213

LT1213

LT1113

LT1113

THD+Nは1kHzの値がよくても10kHzから20kHzにかけて2-10倍程度上昇するようです。

また、VosとTHD+Nはトレードオフになるようです。

D級アンプにおけるオペアンプの音質への影響 その4

自励発振式のD級アンプにおける2回路オペアンプの積分回路での精度の評価をまとめておきます。

こちらの資料を参考にしています。

ppmレベルの精度のオペアンプ回路は実現できるのか?

図と表を引用します。

オペアンプの誤差源
ppm レベルの精度を得るために必要なオペアンプの仕様
ppm レベルの精度を得るために必要なオペアンプのパラメータの比較

比較したオペアンプは以下の11種です。

OPA2227

ADA4001-2

ADA4075-2

AD8672

OPA2134

LM4562

MUSES8920

LT1057

LT1213

NJM2068

LT1113

積分回路は容量を介してFBをかけるため、電源や電流に関連するパラメータ(in, Ib, PSRR, Isc)の影響が大きくなると思われます。

実際のD級アンプで試した積分器に適したオペアンプの中では、ADA4075を基準として、OPA2227, ADA4001-2, ADA4075-2, AD8672, OPA2134, LM4562あたりでしょうか。

TL431によるオプトカプラ・ドライバ回路の試作

D級アンプで使用している絶縁型LLCコンバータでTL431とオプトカプラ(6N136, TLP559, TLP2304)を用いた回路の試作を行ったのでまとめておきます。

TLP2304とTL431によるフィードバック回路

写真中央下部のSOIC8の変換基板がTLP2304でその右側のTO-92がTL431です。

オプトカプラも種類がいろいろありますが、ここではLLCコンバータがfsw=100kHzなので、1MbpsのオープンドレインのPhoto IC(UCC256404のRVCC=13Vで駆動)を選択しています。

同じ定数で、TLP2304, TLP559, 6N136が問題なく動作しました。プロパゲーションディレイと入力容量がそれぞれ異なるので、理論的には電源のトランジェントに影響があるはずですが、D級アンプの出力の聴感で判断するのは難しいと思います。

なお、東芝の6N136, TLP559は生産終了予定となっています。

また、オプトカプラの経年劣化(CTRの低下)が問題になる場合は、Si87xx(Si8710CC, Si8710CD)を選択しますが、現在のところ半導体不足の影響で入手困難です。

D級アンプにおけるオペアンプの音質への影響 その3

自励発振式のD級アンプにおける2回路オペアンプの積分回路でのノイズ密度の評価をまとめておきます。

こちらの資料を参考にしています。

最適ノイズ性能を得るための低ノイズ・アンプ選択の手引き

オペアンプを使った積分器

低ノイズ設計に適したオペアンプの選択
性能指標(Rs,op)の計算

プロットしたオペアンプは以下の9種です。

OPA2227

ADA4001-2

ADA4075-2

AD8672

OPA2134

LM4562

LT1057

LT1213

LT1113

Rs,opが1MΩを超えるJFET入力オペアンプ(LT1057, ADA4001-2, OPA2134)は1MΩの軸上にプロットしています。

また、基準となる積分回路の信号源抵抗は2.7k||56k=2.6kΩ, ジョンソン・ノイズ6.4nVrtHzとして、プロットしています。

実際のD級アンプで試した積分器に適したオペアンプの中で、低ノイズ設計に適したオペアンプは、LM4562, ADA4075-2, OPA2227, AD8672, LT1113となるようです。

D級アンプにおけるオペアンプの音質への影響 その2

自励発振式のD級アンプにおける2回路オペアンプ(積分回路と減算回路)のVs=+-5Vでの音質への影響をまとめておきます。

D級アンプ用オペアンプ比較表 その2

比較対象のオペアンプは以下の11種です。

OPA2227

ADA4001-2

ADA4075-2

AD8672

OPA2134

LM4562

MUSES8920

LT1057

LT1213

NJM2068

LT1113

比較表のデータシートの値(GB積、スルーレート、オープンループゲイン、CMRR, PSRR, 入力オフセット電圧および温度ドリフト、消費電流)はVs=+-15V, Vcm=0V, Ta=25degCのTypicalでまとめています。

実際の動作条件はVs=+-5Vで、回路構成としては積分回路(LPF)と減算回路(比例制御)で利用しています。

また、実際のD級アンプに実装した際の出力電圧のオフセットの実測値(L, R)から算出した絶対値の平均でソートしています。

積分精度への影響が大きい、オープンループゲインとオフセットのよいオペアンプを選択していますが、実際の回路での電圧オフセットの実測値は、必ずしもデータシートの値とは比例しないようです。

D級アンプの電圧オフセットの実測値がよいオペアンプは、OPA2227, ADA4001-2, ADA4075-2, AD8672でした。

TL431によるオプトカプラ・ドライバ回路 その2

絶縁型LLCコンバータなどで2次側の電圧を1次側にフィードバックするためのTL431とオプトカプラの位相補償をまとめておきます。

以下の資料が参考になります。

The TL431 in the Control of Switching Power Supplies

The TL431 in a Modified Type 2 Configuration

DC-DC Converters Feedback and Control

Modeling and Loop Compensation Design of Switching Mode Power Supplies

Demystifying Type II and Type III Compensators Using Op-Amp and OTA for DC/DC Converters

The TL431 in the Control of Switching Power Suppliesからスライドを引用します。

How is Regulation Performed?

絶縁型DC-DCコンバータ用ICのデータシートや、アプリケーションノート、設計ツールでもTL431とOptocouplerの位相補償についてはほとんど触れていないので、設計に際しては基礎的なところから理解しておくことが必要です。

制御と回路の基礎知識があれば順を追って理解できる資料だと思いますが、いかがでしょうか。

TL431によるオプトカプラ・ドライバ回路

絶縁型LLCコンバータなどで2次側の電圧を1次側にフィードバックするためのTL431とオプトカプラ(MOC207)による回路をまとめておきます。

以下の資料が参考になります。

Shunt Regulator Design Procedures for Secondary Feedback Loop in Isolated Converter

Setting the Shunt Voltage on an Adjustable Shunt Regulator

Compensation Design With TL431 for UCC28600

まず、LTspiceによる回路図と過渡応答を示します。

TL431とMOC207による2次側電圧FB回路
TL431とMOC207による2次側電圧FB回路の過渡応答

設計手順としては以下の通りです。

  1. Vref=2.495Vになるように分圧回路を設定
  2. フォトダイオードとTL431へのバイアス電流を設定
  3. TypeIIの位相補償回路を設定

2次側はフォトダイオードのローサイドにシャントレギュレータを配置する構成になります。

1次側はコントローラのFBピンの仕様に応じてオープンコレクタ出力をエミッタ共通かコレクタ共通の構成になります。