スイッチング電源のコモンモードフィルタ(SNA-06-223-T)を入手したので、評価をまとめておきます。
こちらが、実際のD級アンプの電源(出力+-48V)(上からPFC、LLCコンバータ, SNAの構成) に組み込んだところです。

回路構成をみると、COMに接地コンデンサは付いていません。

コモンモードの減衰特性は100kHz-1MHzで-40dB程度となっています。

効果としては十分なようで、価格も手ごろなので、おすすめです。
LTspiceによる回路シミュレーション、EagleによるPCB設計、試作、EMSによる頒布まで
スイッチング電源のコモンモードフィルタ(SNA-06-223-T)を入手したので、評価をまとめておきます。
こちらが、実際のD級アンプの電源(出力+-48V)(上からPFC、LLCコンバータ, SNAの構成) に組み込んだところです。
回路構成をみると、COMに接地コンデンサは付いていません。
コモンモードの減衰特性は100kHz-1MHzで-40dB程度となっています。
効果としては十分なようで、価格も手ごろなので、おすすめです。
T型フィルタ(2次CRハイパスフィルタ)による積分回路の積分非直線性(INL)の最適化設計の続きです。
オペアンプOPA1656をの定数を見直します。
極配置の計算は、2次CRハイパス・フィルタ計算ツールを利用しています。
LTSpiceによるシミュレーションモデルとAC分析です。
まず、OPA1656の入力インピーダンスは6TΩ(=R2)、オープンループゲインは150dBとなっています。そこで、R1の値としてR2/R1=142dBとなるように、470Ωを選択します。
またGB積は53MHzあるので、C1=C2=2200pFとすると、p1=12uHz, p2=154kHzとなり、積分線形性帯域をOPA1656の性能に見合った範囲に伸ばせます。
また、反転入力から見たLPF特性はfc=364kHz<812kHz/2となるため、自励発振周波数(オーバーサンプリング周波数)に対しても、適切な値になります。
最後にD級アンプ全体の特性をLTSpiceシミュレーションで、確認しておきます。
D級アンプ全体(ΔΣADC(812kHz))としては、オーディオ帯域(20-20kHz)のサンプリング周波数(48kHz)に対して、812/48=16倍程度のオーバーサンプリング相当となります。
また、有効ビット数としては、ENOB=(108-1.76)/6.02=17.6>16ビット相当となっています。
また、ENOB=16bitのときのSINAD(S/N)は、16*6.02+1.76=98.08dBとなるので、高能率のスピーカーで評価する必要があります。
まとめとして、T型フィルタ(2次CRハイパスフィルタ)による積分回路の積分非直線性(INL)の最適化設計を検討します。
オペアンプとしてはOPA2134, OPA1656を検討します。
極配置の計算は、2次CRハイパス・フィルタ計算ツールを利用しています。
LTSpiceによるシミュレーションモデルとAC分析もあげておきます。
まず、積分対象範囲の周波数は20-20kHzのオーディオ帯域なので、2つの極配置としては20Hzより下と20kHzより上にそれぞれ配置することがフィルタの設計目標になります。通常2つあるCの値は同じにします。2つめの抵抗値はオペアンプの非反転入力の入力インピーダンス(FET入力オペアンプの場合10TΩ程度)になります。
C1=470pF, C2=470pF, R1=10kΩ, R2=10TΩとすると極の値はそれぞれ、p1=34uHz, p2=34kHzとなります。
この値で積分回路の出力の20-20kHzの直線性 をAC分析で確認するとほぼ120dB/3decとなります。
ポイントとしては、低域の限界はオペアンプのオープンループゲイン(DCゲイン)に依存するため、適切な抵抗値を設定して直線性のよい部分が20Hzあたりになるよう調整します。
また、高域の限界はオペアンプのGB積に依存するため、容量値を適切に設定して直線性のよい部分が20kHzあたりになるよう調整します。
OPA1656の場合GB積が大きいのとオペアンプ回路の特性のため、20kHzよりも上側は1次の傾斜になりますが、帯域外のノイズシェーピングの形状になるようなので特段影響はないようです。
最後に、OPA2134で実際のD級アンプで音を確認したところ、良好な結果が得られています。
積分回路の低周波数特性の改善回路として、バンドストップフィルタによる回路を実装しましたが、ノイズシェーピングとしては1次特性(20dB/Dec)になってしまい、2次特性(40dB/Dec)に比較して、20k-20Hz(3Dec)の帯域では、S/Nが60dB@20Hz程度悪化します。
そこで今度は、多重帰還型フィルタを検討してみます。
以下のリンクが参考になります。
TNJ-050:LTspiceでアクティブ・フィルタのノイズ解析(中編) サレン・キー型と多重帰還型アクティブ・フィルタを比較し、ローノイズ化を図るためにLT1128を使ってみる
まず、多重帰還型フィルタのシミュレーションです。
緑(出力)がノイズシェーピングに相当しますが、fc=48kHzまでほぼ直線的に増加した後、-40dB@4MHzまでさがり、10MHz付近に跳ね返りが生じます。
青(入力)のLPFは肩特性に段が付くのと、4-10MHzに跳ね返りが生じます。
比較のために、通常のT型フィルタのシミュレーションもあげておきます。
緑(出力)10Hz以下の特性はオープンループゲインの上限によるものです。fc=70kHzまで、2次特性で上昇し、-50dBで平坦になります。
青(入力)のLPFも跳ね返りがなく10MHz超まできれいなカーブになります。
つぎに、それぞれのフィルタ回路を実際のD級アンプに組み込んだシミュレーションを示します。
多重帰還型積分回路によるD級アンプ(ゲイン26dB)の20kHz, 1V正弦波入力による出力のノイズフロアは-60dB程度になります。
T型積分回路によるD級アンプ(ゲイン26dB)の20kHz, 1V正弦波入力による出力のノイズフロアは-80dB程度になります。
結論としては、単純なT型積分回路でオペアンプの特性に合わせた構成が最もよいようです。
積分回路の低周波数特性の改善回路を実装してみました。
写真の斜めに付いている抵抗アレイの基板(2012 x4)を2枚スタックしたものが実装した回路で、ECHU(X)(680Fp x2, 330pF)とRG(1MΩ x3)を使用しています。
ADA4001-2では、ノイズが大きいですが、OPA2134では問題ない感じです。低域のオープンループゲインの違いによるようです。音質的には床鳴りがズンズンくる感じになります。
抵抗値が大きすぎるようなので、再度、SPICEシミュレーションをしてみました。{(680p, 470p, 330p), (1000k, 100k, 10k)}で最適な組み合わせを見つけます。
{680p, 10k}(緑)の組み合わせで、低域の位相が90度で平坦になり, ゲインも20dB/Dec(20-20kHz)となるのでよいようです。
積分回路の低周波数特性に関してまとめておきます。
これらの資料が参考になります。
Introduction to Capacitor Technologies: What is a Capacitor?
実際の回路として、電流モードD級GaN FETアンプで、2次のCRフィルタを用いた積分回路を利用しています。
しかしながら、100Hzよりも低域の周波数応答に関して非線形性があります。そこで、AN-357に出ている低周波AC積分器の回路を適用して改善できるか、LTspiceでシミュレーションしてみました。
この回路を1次側もしくは2次側のCに対して適用すればよいようです。
ADA4001-2のオープンループゲインを示します。400Hzから下の帯域はフラットです。
こちらが、元の2次CR積分回路のシミュレーションモデルです。
2次CR積分回路のAC解析です。オペアンプの出力電圧で見ています。100Hzと100KHz付近にポールができるようです。
次に低周波2次CR積分回路のシミュレーションモデルです。反転入力端子側のCに低周波AC積分回路を適用しています。
こちらが、低周波2次CR積分回路のAC解析です。20Hz-20kHzでほぼ線形になります。
実際の音質への影響は、実験してみるしかありません。