LLC共振ハーフブリッジ・コンバータの試作その2

LLC共振ハーフブリッジ・コンバータを改良しました。

UCC28056AのPFCで、駆動しています。

DC390V入力,  f0=100kHz, DC+-48V, 200W出力で設計しています。

主要部品としては、以下の部品を使用しています。

LLC共振コントローラ: UCC256404

LLC用トランス: 760895651

MOSFET: IPAN60R360PFD7S

2次側整流ダイオード: KMB220S

2次側オプトカプラ・ドライバ: LT4430

デジタル・アイソレータ: Si8710AC-B-IS

Excelの設計ツールは、

UCC25640x Design Calculator (Rev. C)

になっています。

負荷としてD級アンプを接続して、

バーストモードの設定をOption 6で、

Vbmt_h={0.417, 1.026, 1.667}Vを試しましたが、

トランスからジーっというノイズが出るため、

最終的に、バーストモードを無効(Option 7)としました。

D級アンプの場合、

無入力状態でも50%のデューティ比で動作しているため、

いわゆる待機状態にはならないので、

バーストモードは必須ではないと思います。

トロイダルトランスによるコンデンサインプットの電源よりも、

力率と整流ノイズの面で有利なので、

音にもそれがそのまま反映されてくる感じです。

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遷移モードPFCの試作

UCC28056による遷移モードPFCの基板設計をまとめておきます。

UCC28056A_760805410

主要部品としては、

PFCコントローラ:

UCC28056B

PFC-Choke:

760805410

MOSFET:

IPAN60R210PFD7S

Diode:

STTH5L06FP

を使用しています。

 

なお、ZCD/CSは補助巻線から行っています。

UCC28056,Using Auxiliary winding voltage for driving ZCD/CS Pin (Rev. B)

 

また、補助電源はUC256404のRVCCから取得しています。

 

 

以下に設計のポイントをまとめておきます。

まず、UCC28056Bは、重負荷(4x 1,000uF x 48V)を起動できず、UCC28056Aでは問題なく起動できました。

PFCの名目電圧390Vに対して、Brown-in電圧が360Vと低くなるようなアプリケーションでは、OVP2が無効になっている必要があるようです。

 

また、UCC28056のVOSNSはOVPの検出にしか利用していないようで、制御はZCD/CSとCOMPだけで行っているようです。

計算ツール

UCC28056x Design Calculator (Rev. B)

が提供されていて、回路定数の設計そのものは容易です。

 

次に、Valley Delay Adjustment(Rdg)の設計ですが、

IPAN60R210PFD7SのCo(tr)=330pFと

760805410のL=225uHから、

Tzdcr=2*3.14*sqrt(330*225)/4=428nsとなり、

Tzcdr0=170ns, dTzcdr5=255nsから、

Rdg5=18k Ohm

を選択しています。

最後に、待機電力の削減に関する、参考資料をまとめておきます。

Optimizing Efficiency and Standby Power With the UCC28056 in Offline Application (Rev. B)

Exceeding Modern Energy Standards with ‘Always On’ PFC and LLC Controllers​ (Rev. B)

 

USBアイソレータのまとめ

オーディオ・インタフェースとしてUSBポートを利用する際に、

エアコンのインバータやPCの電源の影響を絶縁する必要が生じる場合があります。

調べてみると、いろいろあるようなので、まとめておきます。

 

USB2.0の12Mbpsまでのソリューションで、

絶縁型DC/DCコンバータを含まないタイプだとこちら。

ADuM3160

ADuM4160

 

絶縁型DC/DCコンバータを含むタイプだとこちら。

LTM2884

NMUSB202MC

NMUSB2022PMC

 

USB3.0だと、流通にのっていませんが、

こちら。

APISU30-F6-USBCN

APISU30-F6-USBCN-NODC

 

USBの場合、

信号の絶縁と電源の絶縁、両方を行う必要があるので、

注意が必要です。

絶縁電圧は、

一般家庭のオーディオ用途であれば、

低い方で十分だと思います。

多チャンネルのオーディオ・インタフェースは、

USBオーディオ・ディバイスを複数ホストした

USBコントローラとして、

認識されるものもあるようで、

USBアイソレータがハブをカスケードできるかの確認が必要です。

 

 

 

絶縁とケーブルと音質の関係

高価なケーブルはいい音がすると思いますか?

値段に応じた品質しか手に入らないというのは、単なる思い込みです。

値段は希少性に付いているのであって、音質に付いているわけではありません。

業者は、高価なケーブルを買ってしまう希少なあなたを狙っているわけです。

もちろん、高価なエフェクターと割り切って買う分には問題ありません。

電気工学的には当たり前ですが、心理学的には不都合な真実をまとめておきます。

まず、絶縁をすると何がおきるのか、試してみてください。

信号ケーブルを買い換える前に、絶縁トランス(HD400)を試してみてください。

電源ケーブルを買い換える前に、絶縁トランス(ギタリスト電源)を試してみてください。

アンプとスピーカーを信号系と電源系から絶縁するだけで、音が激変すると思います。

これはなぜでしょうか?

信号系は、PCであろうが、CDトランスポートであろうが、AD/DAであろうが、グランドに起因するノイズを伝播します。それを絶縁するわけです。もちろん、絶縁トランスの帯域に起因する問題とのトレードオフですが。

電源系も同様です。日本の場合、ニュートラルが接地されているので、完全に絶縁するためには、電源トランスで行うか、絶縁トランスを使用しているAC/DCコンバータを使用します。

トランスで減圧した後にSiC SBDなどで整流する場合、電源の周波数に起因する整流ノイズ(100/120Hz)は避けられないことに注意が必要です。

なので、良くできた絶縁型AC/DCコンバータ(PFC/LLC)の方が、可聴帯域の2次側のノイズは、低くなることに注意が必要です。

また、信号系のDC結合とAC結合も低域のカットオフとグランド起因のノイズのデカップリングとのトレードオフになることに注意が必要です。

回路や方式はモデルであって、実際の実装に起因するトレードオフは捨象されていることに注意が必要です。

マーケティング的には、不都合な真実は決して語られることがありません。

科学的な文脈と心理学的な物語は別物です。