トランスリニアバイアス回路についてまとめておきます。
LT1166のデータシートから引用します。
乗算器の動作
図2にLT1166内部の電流乗算器回路と、
出力トランジスタとの関連性を示します。
LT1166の電源電圧VT(トップ)とVB(ボトム)は、
パワー・デバイスの所要“オン”電圧によって設定されます。
また、基準電流IREFで、VBE7とVBE8が一定電圧に設定されます。
この電圧はQ9とQ10のエミッタ・ベース間の電圧で、
Q7とQ8のエミッタ部分の1/10になります。
この電流乗算器に対応する式は、以下のとおりです。
VBE7+VBE8=VBE9+VBE10
あるいは、電流に関しては、以下のとおりです。
(IC9)(IC10)=(IREF)2/100=一定
IC9とIC10の積は一定です。
これらの電流はミラーされ、
内部オペアンプ・ペアの(+)入力の電圧を設定します。
オペアンプの帰還によって(-)入力の電圧が等しくなり、
これらの電圧はパワー・デバイスと直列に接続されるセンス抵抗に現れます。
パワー・デバイスの2つの電流の積は一定で、
一方が増加すると他方が減少します。
Q9とQ10は対数特性に優れているため、
10倍単位の電流変動においてもこの関係が維持されます。
Q7とQ8の全電流は実際には、
IREFとシャント・レギュレータの小さな誤差電流の和になります。
高い出力電流条件では、レギュレータからの誤差電流は減少します。
レギュレータによって流れる電流も減少し、
パワー・デバイスをドライブするのに必要なだけVTまたはVBを上昇させることができます。
トランスリニアバイアス回路は、
原理的に電流積が一定なので、
バイアス電流が0にはなりません。
(バイアス電流が0になると電流積が0になってしまい、一定にならない)
LT1166によるトランスリニアバイアス回路の実装は、
ソース抵抗(エミッタ抵抗)を
バイアス電流の検出抵抗として利用しているため、
エミッタ抵抗レスの構成にするには、
他の電流検出方法を検討する必要があります。