バスレフの吸音材の貼り方に関する考察をまとめておきます。
設計例として、FF105WKのデータシートに載っている、
バスレフエンクロージャー(6L, 128x192x264mm)を引用します。
まず、吸音材を貼る目的は、定在波の低減です。
直方体のエンクロージャー内部で発生する定在波の周波数(kHz)は、
音速(340m/s)を面間、辺間、頂点間それぞれの距離(mm)で割れば求まります。
計算結果を表にしておきます。
幾何学的には、2.66kHzから0.97kHzの定在波が発生することがわかります。
これらの定在波をすべて低減するためには、
少なくとも平行でない3つの面に吸音材を貼ることが必要です。
また、吸音すべき周波数帯域は、通常、
400Hz以上のバスレフ共振に不要な帯域です。
バスレフの場合、エンクロージャーの容積が共振周波数に影響するため、
ニードルフェルトなど面に貼るタイプの吸音材はできるだけ薄いものが理想的です。
また、バスレフポートの開放端付近では、
空気の流れを阻害しないことが必要です。
したがって、グラスウールなど空間に充填するタイプの吸音材は、
位置を固定しづらく、
エンクロージャーの容積の減少に寄与する実質体積を定量的に把握するのが困難で、
詰めすぎると共振に必要な低域のエネルギーも吸収してしまうため、
バスレフには不向きと考えます。