過去記事の
に対して、
他励式BTL D級アンプのPSRRを向上してゲイン歪みを低減するために、
電源レールの電圧を変調器にフィードバックするとどうなるか?
という興味深いコメントをいただいたので、
いろいろ調べてみました。
Bob CordellのDesigning Audio Power Amplifiersの第1版(すでに第2版がでていますが)の
Part 6 Class D Amplifiers
29 Class D Design Issues
29.4 Power Supply Rejection
P. 576 Power Supply Feedback to the Triangle Generator
にもこのアプローチは簡単に触れられています。
また、D級アンプの基礎的な理解のために以下の記事も参考にしています。
トランジスタ技術 2003年8月号 p.179-186, 第6章 ディジタル・アンプ用電源回路の設計
トランジスタ技術 2008年3月号 p.113-119, 第2章 アナログ信号をH/L信号に変換する「PWM」
D級パワー・アンプの回路設計 p.37-50, 第5章 デッド・タイムと高調波ひずみとPSRR
さて、まずはLTspiceの回路図です。
3-Level PWM D級BTLアンプの三角波生成回路(変調器)
(LT1358によるシュミットトリガ回路と積分回路による非安定マルチバイブレータ)に対して、
正負電源レールからの電圧を加算回路でシュミットトリガ回路にフィードバックをかけています。
1.5V 20kHz 正弦波入力時の過渡解析のシミュレーション結果です。
青(+50V), 赤(-50V)の電源レールをレベルシフトした波形(0.5V程度の電圧降下と出力振幅に応じた矩形波が重畳している)、
水色(加算回路の出力(ゲイン4.7倍)、灰色(変調器出力(電源レールの変動が加算された三角波(+-2.5V, 480kHz))、
ピンク(入力)、緑(出力(ゲイン40倍)/30)です。
結果としては、
電源変動のフィードバックをかける前のTHD20=0.44%,
電源変動のフィードバックをかけた後のTHD20=0.37%です。
16%のTHD20の改善が得られました。