GaN(TPH3206PSB)ととSiC(C3M0280090D)の
両方でハードスイッチングのD級アンプを試作した結果得られた、
デバイスの特性の違いやD級アンプでの設計の考慮点をまとめておきます。
なお、参考資料としては次の2つがわかりやすいです。
Dead-Time Optimization for Maximum Efficiency
まず、デッドタイム24nsでしばらく動作させたGaN MOSFETアンプの状況です。
基板右側中央のゲートドライバ(Si8244)周辺の
アクロスザラインのスナバ抵抗(4.7Ω 1W)、
ブートストラップダイオード(1N4148)の電流制限抵抗(4.7Ω 1/4W)、
ゲート抵抗(4.7Ω 1/4W)およびその周辺の基板のレジストが
変色しているのがわかります。
また、ブートストラップダイオードの故障も発生しました。
これは、GaNをハードスイッチングで使用すると、
非常に大きなdi/dtによって、
ドレインソース間電圧が増大することに起因しているようです。
対策としては、アクロスザラインのスナバは抵抗なしの
0.1uF 250V X7R MLCCに変更して、
電流制限抵抗とゲート抵抗は10Ω 1/4Wに変更しました。
また、デッドタイムを200nsに伸ばして、
アイドル時はZVS動作をさせるように設定しました。
SiC MOSFETアンプは内部ゲート抵抗が26Ωと大きく、
ハードスイッチングに伴うオーバーシュートも小さいようで、
基板に問題は発生していませんが、
アクロスザラインのスナバは0.1uFに変更しました。
また、デッドタイムも120nsに伸ばして、
ZVS動作をさせるように設定しました。
SiCはゲート電圧(Vgs)0Vではゲート電荷(Qg)が1nC残るため、
アイドル時のオフセット電圧が4mV程度残ります。
これに対して、GaNではほぼ0mV程度となっています。
ZVS動作にすることによって、
ヒートシンクの発熱がほぼなくなるのと、
アイドル時のハードスイッチングで発生していた
ノイズとオフセット電圧が減少します。
また、効率の増大(消費電力の低下)によって、
電源レールの電圧も上昇します。
自励発振式のD級アンプの場合、
PWMのデューティ比に応じて、
ハードスイッチングを伴う部分的なZVS動作を行うため、
効率とノイズ特性では良好な結果が得られます。