まず、LT1166のデータシートから位相補償に関する部分を引用します。
周波数補償および安定性
入力相互コンダクタンスは入力抵抗RINと
32:1電流ミラーQ3/Q4およびQ5/Q6によって設定されます。
抵抗R1およびR2はRINの値と比較して小さくなります。
RINの電流はQ4またはQ6の電流の32倍になり、
外部補償コンデンサCEXT1とCEXT2をドライブします。
これら2つの入力信号経路が並列になって、
下記の相互コンダクタンスを与えます。
gm=16/RIN
利得バンド幅は以下のとおりです。
GBW = 16/2π(RIN)(CEXT)
出力デバイスの速度に応じて、
標準値はRIN=4.3k、CEXT1=CEXT2=500pFであり、
1.2MHzの-3dBバンド幅が得られます(標準性能特性曲線を参照)。

不安定動作を回避するには、
図1に示すとおり優れた電源バイパスを実現することが重要です。
大容量電源バイパス・コンデンサ(220μF)を使用し、
電源リードを短くすれば、これらの高電流レベルでの不安定性を解消できます。
出力デバイスのゲートと直列に100Ω抵抗(R2およびR3)を接続すれば、
図1の100Ω抵抗R1およびR4と同様に、
100MHz領域での発振が停止します

次に、100Wオーディオパワーアンプに関する部分を引用します。
100Wオーディオ・パワー・アンプ
低歪みオーディオ・アンプの詳細を図19に示します。

CMRR特性が優れている理由からLT1360(U1という名前
が付けられている)が選択され、
サスペンデッド電源モードにて-26.5V/Vの閉ループ利得で動作します。
U1の±15V電源は、D点の出力で効果的にブートストラップされ、
図14に示すとおり構成されます。
VINに3VP-P信号が入力されると、
A点では出力に80VPPの信号が現れます。
抵抗7~10は、U1の利得を-26.5V/Vに設定し、
C1はU1のCMRRで生成される追加極を補償します。
回路の残りの部分(A点からD点)は、
超低歪みのユニティ・ゲイン・バッファになります。
ユニティ・ゲイン・バッファの主要部品は
U4(LT1166)です。
このコントローラには2つの重要な機能があります。
すなわち、R20とR21の電圧積を一定に維持しながら、
M1とM2のゲート間のDC電圧を変化させること。
そして、電流制限を行って、
短絡時にM1とM2を保護することです。
U3の役割は、M1とM2のゲートをドライブすることです。
このアンプの実際の出力は、
一見したところ考えられる点Cではなく電源ピンです。
R6を流れる電流を使用して電源電流を変調し、
VTOPおよびVBOTTOMをドライブします。
U3の出力インピーダンス
(電源ピンを通した)は非常に高いため、
20kHzでの歪みを非常に低く抑えるのに必要な速度と精度で
M1およびM2の容量性入力をドライブすることはできません。
U2の目的は、低出力インピーダンスを通して、
M1およびM2のゲート容量をドライブし、
M1およびM2の相互コンダクタンスの非直線性を低減することです。
R24とC4は、U2がU3とU4を管理しなくなるが、
利得が1になると自身を管理するような周波数よりも
高い周波数を設定します。
R1/R2とC2/C3はCMRRフィードスルーに対する補償部品です。
位相補償に関しては、
C1でドミナントポール、
R5とC5でポールスプリッティング、
R24とC4でフィードフォワードを
それぞれ調整できます。
制御の観点からは、こちらが参考になります。
Internal and External Op-Amp Compensation:A Control-Centric Tutorial
次に、SiC MOSFETアンプにおける、
C1=10p, R5=510, C5=3300p, C4=22p, R24={2.4k, 4.7k}
でのLT SpiceによるAC解析の結果を示します。

R24=2.4kの時は、
U3の位相がどんどん遅れてしまうことがわかります。

R24=4.7kの時は、
U2, U3, U4のユニティゲイン(0dB, 1.3MHz)での
位相が90degと十分な位相余裕を確保できます。

試作機では大音量で安定性の問題が起きたので、
大容量電源バイパス・コンデンサ
C13/C15を22uFから470uFに増やしました。

また、ドライバ段のベースストッパーは100Ωに戻して、
ドライバ段(MJE15032/MJE15033)はIq=70mA、
出力段(C3M0280090D)はIq=200mAに
それぞれ設定しています。
エージングが進むにつれて、
音はますます魅力的になっています。