AB級SiC MOSFETアンプの試作中に、
電源の整流用SiC SBD(SCS206AG)が壊れる状況が発生しました。
8Ω, 100Wのオーディオアンプの負荷を想定して、
If=6Aで足りると考えていましたが、
想定外の状況では不十分のようです。
具体的には、ドライバBJT(2SC4883A/2SA1859A)のばらつきから恐らく
ゲート電圧が発振してしまい、
SiC MOSFET(C3M0280090D)が貫通電流によりショートした模様です。
その結果、負荷が電流検出抵抗(0.22Ω)のみになってしまい、
電圧降下が大きくなり、平滑用コンデンサが充電できずに、
SiC SBDに大きなピーク電流が繰り返し発生する状況になったため、
熱破壊に至ったと推測しています。
そこで、短絡状態の状況における電源回りの振る舞いを
SPICEシミュレーションで確認してみます。
回路図を示します。
SiC SBDのモデルはSCS315AHGです。
300VAのトランスの突入流電流防止用にNTCをつけてあります。
過渡解析の結果を示します。
緑がSiC SBDに流れる電流(Ifrm: 10ms sine halfwave 60A peak)、
赤がSiC SBDの熱損失(Pd: 150W peak)です。
60Aの過電流を許容できたとしても、
平均で50Wx8程度の放熱ができないと、
確実に熱破壊に至ると思われます。
これらの条件を踏まえて、
3つのSiC SBD(Rohm SCS315AHG, CREE C3D16065A, Infineon IDH16G65C6)の
データシートを比較します。
いずれもVr=650V, If=15A程度の製品ですが、
Qc, Vf, Ifrm, Pd, I2tはかなり違うことがわかります。
音質に関係するのはQcですが、
熱の発生はVf, 熱の放出はPd, 過電流への耐性はi2tが支配的です。
また、商用電源の整流用なので、
Ifrmは10ms(50Hz) sine halfwaveで見る必要があります。
これらの基準で選ぶとすると、
Infineon IDH16G65C6が良さそうです。
ただし、放熱板かヒートシンクは必須です。
CoolSiCとは、言い得て妙ですね。