ZVS ハーフブリッジの動作に関して参考になるアプリケーションノートをあげておきます。


LTspiceによる回路シミュレーション、EagleによるPCB設計、試作、EMSによる頒布まで
ZVS ハーフブリッジの動作に関して参考になるアプリケーションノートをあげておきます。
ZVS D級GaN MOSFETアンプの設計の参考になるリンクをまとめておきます。
GaN MOSFETアンプのデッドタイムをZVS(Zero Voltage Switching)に最適化してみました。
まず、無信号時(正弦波入力 0V, 20kHz)の
スイッチングノードのデッドタイム期間の電圧波形(青)が、
大体、P-Pの正弦波の1/2周期になるようにデッドタイムを設定します。
LT Spiceシミュレーションの過渡応答はこんな感じになります。
緑がLPFのコイルを流れる電流波形で、山と谷が丸まった三角波になります。
赤はスナバの抵抗を流れる電流で、ノイズレベルの目安になります。
水色は正電源、ピンクは負電源を流れる電流です。
こちらが無信号時の出力電圧のFFTの結果です。
搬送波の周波数(1.5MHz)に-30dB(ほぼゲインに等しい値)のスペクトルがたって、
それよりも高いところにスイッチングノイズのスペクトルがたっています。
40Hz付近のピークはLPFのQによるものです。
次に微少信号時(正弦波入力0.1V, 20KHz)の時の過渡応答です。
緑の電流波形が三角波が正弦波状に揺れていることから、
増幅されていることがわかります。
赤のスナバ電流が出力の振幅に応じて増大することがわかります。
ゼロ出力電圧領域ではソフトスイッチングで、
正負出力電圧領域ではハードスイッチングしていることになります。
周波数領域でみると搬送波よりも低い周波数領域(自励発振式なので可変周波数)と
高い周波数領域(ハードスイッチングによる損失の増大)でスペクトルが増えてきます。
最後に、最大入力時(正弦波入力1V, 20kHZ)の過渡応答です。
緑の出力電流は5A程度まで増大しますが、
水色の正電源電流、ピンクの負電源電流は0.5A程度に止まります。
スイッチングによりパンピングしていることがわかります。
周波数領域で見るとスペクトルの帯域は増えますが、
ピークは抑えられているようです。
聴感上の変化としては、ノイズフロアが下がるため、
明瞭感が格段に向上します。
また、スイッチング損失が減少するため、
GaN MOSFETの発熱も格段に下がります。
なお、デッドタイムが長いため、
大振幅時にパルス幅が減少もしくは消滅しますが、
音楽信号で定常的にこの状態は発生しないため、
GaN MOSFETの線形領域動作での熱破壊の可能性は低いはずです。
結論として、D級アンプとスピーカーは、
電気機械共振の連成系として設計するのが合理的だと思われます。
D級GaN MOSFETアンプのスイッチングノイズ対策が完了すると、
今度は電源のリップルノイズが耳に付くようになってきます。
D級アンプは原理的にPSRRが0dBなので、
当然の帰結ではありますが、
トランスとダイオードブリッジによる整流回路では、
リップルノイズが100または120kHzとその高調波になっていて、
丁度、可聴帯域にあるため耳に付くわけです。
対策としては、
リザバーキャパシターをスプリットしてCRフィルターにしたり、
トランジスタでキャパシタンス・マルチプライヤを構成する方法が一般的なようですが、
ここでは2段LCフィルタによるアプローチを取ります。
技術的な詳しい内容は
を参照して下さい。
2段LCフィルターの定数を
L1=33mH, L2=3.3mH, C1=1,000uF, C2=10,000uF とした、
LT SPICEによるシミュレーションモデルはこちらになります。
過渡応答のシミュレーション結果はこちらになります。
フィルター通過前の電圧が赤で、通過後の電圧が緑です。
明らかにリップルが減少しています。
フィルター通過前の電圧のFFTがこちらです。
10倍の高調波(1kHz)まで容易に確認できます。
フィルター通過後の電圧のFFTがこちらです。
100Hzで-7dBの効果, 3倍の高調波(300Hz)までしか確認できません。
これは試作してみる価値がありそうです。