SPICEシミュレーションでTPH3206PSBによるD級GaN MOSFETアンプの
自励発振に関するパラメータを詰めました。
IRS2092のパラメータに寄せています。
最終的なSPICEモデルの回路図はこちら。

1V, 1KHz正弦波入力時の過渡応答はこちら。
緑:出力電圧、青:スイッチング電圧、水色:Lスイッチング電流、赤:Hスイッチング電流

まず、シュミットトリガのパラメータですが、
ヒステリシス(Vh)は、IRAUDAMP7DによるとIRS2092のコンパレータのヒステリシスは0なので合わせます。
ヒステリシスがあるとLPFで除去できない搬送波による出力電圧のリプルが大きくなります。
プロパゲーションディレイ(Td)は、IRS2092のゲートドライバで335/360ns,汎用 コンパレータLT1011で150nsなので、
500nsとします。
また、入力パルス幅の最小値が10nsなので、TripDtはこの値としています。
この値で、自励発振周波数が420kHz程度になるので、恐らく妥当な値だと思われます。
電源電圧は+-45Vとしていますが、
最大入力時にクリップしないように、フィードバック抵抗は100kΩにしています。
また、積分器のコンデンサ容量は1nF, 1nF、抵抗値は300Ωとしています。
抵抗値を変えても自励発振周波数はほとんど変化しないため、
ビートを回避するために左右のチャンネルで周波数を20kHz以上離したい場合は、
コンデンサ容量を1.2nF, 1.2nF等に変更するほうが良さそうです。
一番悩ましいのは、ゲート抵抗の値です。
自励発振周波数にも影響しますが、
スイッチング電流の大きさおよびパルス幅とスイッチング電圧のリンギングの大きさの
トレードオフになります。
結局22Ωのままとして、スイッチング電流が最大で25A、パルス幅25ns,
スイッチング電圧のリンギングのピークが5-10Vとなっています。
これらのシミュレーション結果を踏まえると、
DT(デッドタイム)は40nsでスイッチング電流のパルス幅をカバーして貫通電流を回避できます。
また、OCP(過電流保護)は30Aで良さそうです。
結論として、TPH3206PSBでもIRAUDAMP7Dのパラメータでほぼいけると思われます。