GaN MOSFETアンプの設計で、
SPICEシミュレーションを用いて、
周波数応答、
矩形波応答、
静止バイアス電流、
正弦波応答を観察しながら
パラメータを詰めた結果をまとめておきます。
まず、GaN MOSFET(TPH3205B)に限らず、
入力容量が1000pFを越えるようなMOSFETをパワー段に用いると
ゲート電圧に寄生発振が起きるのが普通です。
今回は47Ω+100pFのゲートゾーベル(Gate Zobel)をゲートとドレイン間に設定して
100Ωのゲートストッパーでも抑制できない寄生発振を抑えています。
また、オペアンプ(LT1360)のI/V変換により電源ピンでゲートをドライブしていますが、
ゲイン余裕と位相余裕を得るためにフィードバック抵抗の値を3.3KΩから1.5KΩに下げています。
この値でも、1V, 20KHzの正弦波でのTHDが0.0058%となっています。
もちろん、基本的な対策として、
ドライバ段のBJT(2SC4883A, 2SA1859A)のベースストッパー(33Ω)と
パワー段のMOSFETのゲートストッパー(100Ω)は、最初から入れてあります。
一方、自動バイアス(LT1166)の
バイアス電流の検出抵抗値(0.1Ω+0.1Ω)と
電流制限の検出抵抗値(0.1Ω)を個別に設定し、
パワー段のMOSFETの
静止バイアス電流が100mA、
電流制限が13Aに設定しています。
また、ドライバ段の静止バイアス電流は、
100Ωのコレクタ抵抗と100Ωのエミッタ抵抗による
エミッタディジェネレーションで、27mAになっています。
MOSFETを高速でターンオフするためには、
ゲート容量を短時間で抜く必要がありますが、
その時間はこのドライバ段の静止バイアス電流で決まります。
駆動能力の確認として、
スピーカー相当の抵抗負荷を8Ωから2Ωまで下げてみても、
大きな貫通電流は生じず、1Ωから0Ωにした場合でも
ゲート電圧が18Vを越えないのでロバスト性も十分なようです。